一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(通称:こゆ財団)が主催するオンラインイベント、地方創生SDGsサミットが2020年12月13日(日)に開催され、総勢40人がこのイベントを視聴しました(再生回数957回)。
配信会場は東京都港区赤坂にある赤坂スターゲートプラザ。当日は、地域ビジネスを首都圏でつくるビジネススクール「ローカルシフトアカデミー」の受講生によるビジネスプレゼンテーションも行われ、会場にはプレゼン登壇者とそれを見守るアカデミーの参加者、ゲスト登壇者が集結しました。
【登壇ゲスト紹介】*敬称略
◯堀口 正裕
TURNSプロデューサー
TURNSプロデューサー 株式会社会社第一プログレス常務取締役 TOKYO FM「SkyrocketCompany スカロケ移住推進部」 「デュアルでルルル♪」ゲストコメンテーター 国土交通省、農林水産省等での地方創生に関連する各委員を務める他、地域活性事例に関する講演、テレビ・ラジオ出演多数、全国各自治体の移住施策に関わる。 東日本大震災後、豊かな生き方の選択肢を多くの若者に知って欲しいとの思いから、2012年6月「TURNS」を企画、創刊。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす、関わり続ける為のヒントを発信している。
◯島田 由香
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社取締役 人事総務本部長 / YeeY Inc. 代表
1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GEにて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。高校2年生の息子を持つ一児の母親。Delivering Happiness Japanチーフコーチサルタント/Japan Positive Psychology Institute 代表 米国NLP協会マスタープラクティショナー/マインドフルネスNLP®トレーナー。
◯井土 亜梨沙
Forbes JAPAN編集者
1990年生まれ。一橋大学卒業。 Forbes JAPAN コミュニティプロデューサー。元ハフポスト日本版ブログエディター。ハフポストでは「Ladies Be Open」のプロジェクトを立ち上げ、女性のカラダにまつわる様々な情報を発信したほか、1か月間メイクしない自身の生活を綴った「すっぴん日記」なども担当した。
◯赤羽 裕子
株式会社羽田未来総合研究所 アート&カルチャー事業部
慶應義塾大学法学部卒。株式会社リクルート、慶應義塾福沢諭吉記念文明塾事務局に勤務の後、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科前期博士課程修了を経て現職。同社は、日本空港ビルデング株式会社の100%子会社で、羽田国際空港の立地を生かした新規事業創造として、地方創生の情報発信などを目的とした新しいビジネスモデルの構築を試みている。
◯井上 貴至
内閣府 地方創生推進事務局
1985年大阪生まれ。2008年に東京大学法学部を卒業後、総務省へ入省。国家公務員などを地方に派遣する「地方創生人材支援制度」を発案し、自らも制度を使って15年4月から鹿児島県長島町に就任し、同年7月からは副町長に。若者の地元へのUターンを狙った「ぶり奨学金制度」など地方の課題解決につながるユニークな施策が全国から注目を集めた。17年4月からは愛媛県市町振興課に赴任。19年4月に総務省に復帰し、現在は内閣府に出向中。
◯齋藤 潤一
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事
米国シリコンバレーのIT企業でブランディングマネージャーを務めた後、帰国。東日本大震災を機に「ビジネスで地域課題を解決する」を使命に地方の起業家育成を開始 。2017年より宮崎県新富町役場が観光協会を解散して設立した一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以下こゆ財団)の代表理事に就任。こゆ財団は、1粒1000円のライチを開発し、起業家育成に投資、その結果、移住者が増加している。これらの活動が評価され2018年12月国の地方創生優良事例に選定された。MBA(経営学修士 )/ 慶應義塾大学大学院 非常勤講師。
こゆ財団の活動紹介
まず始めに、「世界一チャレンジしやすいまち」をビジョンに掲げ活動している宮崎県新富町におけるこゆ財団の活動紹介からスタート。
こゆ財団は、2017年4月に宮崎県児湯郡新富町が旧観光協会を解散して設立した地域商社。行政では成し得なかったスピード感で『特産品販売』と『起業家育成』を行いながら地域経済の創出に取り組んでいます。主に、1粒1000円の国産ライチのブランディング・販売や、起業家育成塾などを実施しています。移住者や起業家が増加しており、2018年の国の地方創生優良事例に選出されました。
トークセッション①:ローカルシフトとは?ポジティブなシフトが人生を豊かにする
それに続き、ローカルシフトをテーマに堀口氏、島田氏、井上氏、齋藤氏によるトークセッションが行われました。
堀口氏は、コロナだから地域に、と報道されていることに違和感を唱え、「地域との関わり方は、豊かな選択肢を生み自分らしい生き方や肩の力が上手に抜けた生き方のための、いろんな人生シフトを考えるいいきっかけになると思ってTURNSを刊行している」と説明。
島田氏も「コロナは、人生ってなんだろう、生きるってなんだろう、と世界のみんなで考えるきっかけになった。心配やネガティブではなく、”どうやってみんなでより良い場にしていくかをみんなで行動できる機会だとポジティブにシフトすることが大切」と話し、「地域にエネルギーがいくことで、元々地域にあったもののパワーが増していく」と話しました。
一方、総務省や鹿児島県長島町の副町長を経験するなど、行政の中心と地方のどちらもを経験してきた井上氏は、「ローカルシフトなどの新しい動きは、国や企業の中枢が今まで目を背けてきた部分」としながら、「変えよう変えようとし過ぎると良くない。今まであったものの歴史や経験をリスペクトしながら足りないものを組み合わせたり、町の困りごとを一緒に考えてアイデアを出すことが大切」と自身の副町長時代の経験を紹介しました。
移住は定住じゃない。会社に属しながら個人のワクワクを実現できる時代
移住したらずっとそこに居続けなければいけないというイメージがあった一昔前。現在では、変わっていくことや循環の重要性を耳にすることも多くなってきました。定住ではなく、地域への関わりシロを持つことで一人一人が自分らしく力を発揮する方法が、これからのローカルシフトでは増えていきそうです。
「TURNSのアンケートにおいても、定住を強いる地域は人気がない傾向が見えます。それよりも、“地方でのリモートワークを会社に説得するにはどうしたらいいか”といった問い合わせが多い。オンラインで東京に出勤し、会社に属しながら個人のワクワクを実現できる時代なんです」と堀口氏は語ります。
「まず“知る”がないと次のステップに行かない。“知る”が大切であり、“誰がそのストーリーを語るのか”が重要。そしてその地方に行ったときには“誰に会うか”の体験が重要。リピートする地方は“あの人に会いたい”が原動力。DoingがBeingになり、移住へと変化していく」と島田氏も続けます。
井上氏は、鹿児島県長島町の特産品であるブリを例に挙げ、「回遊魚のように一箇所に留まらず、その時々のライフスタイルによってファッションのように好きな町に住めばいい」とし、齋藤氏もこの場でこの後プレゼンを迎える受講生等に「現地で感じたもののありのままの感想を持てばいい。その地域を好きになり、関わりしろを持ち続けることで繋がり続けることができる」とアドバイスを送った。
ビジネスプラン発表:宮崎ローカルシフトアカデミー最終ビジネスプレゼン
宮崎ローカルシフトアカデミーとは、「自分らしく、ありのままに生きる人を増やしたい」をコンセプトに、東京など都市部在住で地域に興味関心がある人、UIJターンを考えている人、新しい働き方を模索している人を対象とした、起業家精神の醸成を目的とする人財育成プログラムです。スタートから2年(計3期の受講)で58名が受講しました。その中から、宮崎県新富町に4名が移住。地域おこし協力隊として活動を行っており、起業に向けて準備しています。
最優秀賞「地元プロサッカーチームの試合観戦イベント」:福永淳史
地元で熱くなれるようなものを求めている20代・30代の若者向けに宮崎県初のプロサッカーチームの試合を応援することで“一体感”や“感動”を提供
優秀賞「Venture Pod」:有賀沙樹
音声メディア(Podcast)を使ってベンチャー企業の魅力を発信
地域活性化賞「LPCAL Curation」:甲斐隆児
アーティストの視座から捉えた地域の人たちや暮らしの魅力を発信
TURNS賞「超帰省」:原田稜
新しい地元・地域との接点の価値を提供するサービス
島田賞「継ぎ木」:青柳大輔
木育、技術継承のシンボルとしてのTOYプロジェクト
「整え部」:仲田優子
都会と地方を繋げるコミュニティー
「ぺいふぉあホーム」:潮来達也
思い入れのあるホーム(故郷や地域)を共通にする2者がホームにペイ・フォワード(恩送り)することを支援
トークセッション②:いい意味で変態
後半は、プレゼンを元に、ゲスト6名によるトークセッション。
編集者である井土氏は、記事にするならどこにポイントを置くかを考えながらメモを取っていたと話し、「創り出す掛け算が面白かった。起業するにあたって市場をとりにいくのは難しいけど、掛け算をすることで新しい市場を創り出していると感じ、いい意味で変態になることができる」と感想を述べました。島田氏も「共通して行動力がある。みんな何かしら行動してすでに学び進めている」と続けました。
堀口氏は、「“やらなきゃ・・・”といった悲壮な覚悟がない。楽しみながら、小さい起業から始めてファンを増やしていけるいい提案ばかりだった。」とし、「投げられても受け身を取って立ち上がる姿勢が感じられた。楽しく続けられるのは仲間がいるからだろう」と井上氏も語りました。
赤羽氏は、「コロナを感じさせることがないくらいいろんなことをしている。Facebook上で頑張っている新富町を見ると明るくなれた」と新型コロナウイルスで萎縮することなく活動する受講生や新富町に関心していました。
これからのビジネスとの向き合い方
今後の改善点・成長点については、発信が大事でありそれを継続すること、価値を高く置き、目標を世界にすることなどが挙げられ、また、誰にも真似されないような付加価値をつけ、自分なりの軸で世界一を目指せばいいと述べられました。
そして、「ビジネスを作っていくとは、人と繋がって、感謝を伝えてさらに関係性を繋げていくこと。これからの時代ではそういうことなんだと感じた。」「どこに意識を向けるかによって入ってくる情報は変わる。選択的注意をして、自身のハピネスレベルを増やしていくことが大事。」「どんな火でも心に灯し続けて発信すること。後になって“あ、そうだ。私ここで動いたんだ”と振り返ることができる」といった、あたたかいエールが贈られました。
受講生の声:動いたことで得られた景色
プレゼンに登壇した受講生たちは、「見守ってくれている仲間の顔や、声援が受け取れてよかった」「ここで終わらずに改良や実践を続けていきたい」などの感想が述べられました。
さらに、プロトタイプをしてみての感想を聞かれると、「お金を受け渡すまでの責任を持てていなかったことに気づいた」「動いたら苦しさを手放せて呼吸がしやすくなった」「発信したらすごくポジティブなメッセージがたくさん届き、原動力になった」「次の一歩が見えた」など、行動した者のみが感じられる思いを共有してくれました。
チャレンジしていいんだという環境が見つかり、「やらなきゃ」から「やりたい」へ変化していったローカルシフトアカデミーの受講生たち。彼らのエンジンはここで止まることなく今後も加速していくようです。
こゆ財団では、今後も彼らのチャレンジを応援し、見守っていきます。
撮影・ライター : 宮地 綾希子
今年度のローカルシフトアカデミー講座記事(参考)
第1回講座
https://koyu.academy/localshiftacademy2020-09-04/
第2回講座
https://koyu.academy/localshiftacademy2020-09-24/
第3講座(フィールドワーク)
https://koyu.academy/localshiftacademy2020-10-034/