循環型社会へ ~シフトしていく生き方、はたらき方~|ローカルシフトアカデミー第5講座

~起業家精神育成プログラム「ローカルシフトアカデミー」第5回~

東京など都市部在住で地域に興味関心がある人、UIJターンを考えている人、新しい働き方を模索している人を対象とした、起業家精神の醸成を目的とする人材育成プログラム「ローカルシフトアカデミー」が2020年9月から開講。12月に開催される最終プレゼンを控えた、第5回目講座を11月5日(木)に開催しました。今回は、パソナJOB HUB 事業開発部⻑であり、ソーシャルイノベーション部長である加藤遼さんをお迎えして、「ビジネスモデル/ブランディング」というテーマでお話を伺いました。

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加藤遼さん(パソナJOB HUB 事業開発部⻑ 兼 ソーシャルイノベーション部長)

第5講座(ビジネスモデル/ブランディング)
日 時:11月5日(木)19:30~21:30
講 師:加藤遼さん(パソナJOB HUB 事業開発部⻑ 兼 ソーシャルイノベーション部長)

今回講師である加藤さんは「旅するようにはたらく」をテーマに、日本のみならず海外のあらゆる地域と関わり、その活躍の場も多岐にわたる。一部ではあるが、「旅するようにはたらく」をコンセプトに都市部の人々と地域をつなぐ複業マッチングサービス「JOBHUBLOCAL」、地域と企業のワーケーションマッチング支援を行っている。「サーキュラーエコノミー」「サステナブルツーリズム」をテーマとした事業開発に携わっている加藤さん、ファシリテーター稲田さんとの対談で講座がスタートしました。

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加藤遼さん(写真左)稲田佑太朗さん(ファシリテーター)

地域に惚れ込むひとたち

Q.  首都圏を拠点とするスキルを持ったひとたちが地域とどのように関わるか?

加藤さん:参加者は、収入というよりも、スキルや知識で社会貢献したい、地域で困っている経営者を助けたい、というモチベーションでエントリーするが、結果的に地域の企業とのマッチングや仕事を通して、新しい生き方への気づきや心が洗われた、という参加者の声も届いている。

例えば、2018年から東京の人たちが岩手に遠距離恋愛するかのごとく、地域の企業に複業するというプロジェクト。地域の社長に惚れて参加者側から「ラブレター」を出し、意中の相手に返信し、マッチングするという設計のようだ。

岩手企業との複業マッチング事業「遠恋複業課
都市部の人材と地方企業のマッチングサイト「JOB HUB・LOCAL(ジョブハブ・ローカル)」を通して地域企業、ひとと出逢い、参加者は、地域の経営者やひとの想い、人生観に触れ、地域に惚れ込んだという人たちもいるようだ。

ひとりの人がいくつもの仕事ができる 百姓的な働き方、生き方

Q.  「遠恋複業課」プロジェクトの「複」に込められた想いとは?

加藤さん:会社の仕事も、地域の仕事も両方本気でやる、という意味合いでマルチの「複」にしている。思想的にはひとりの人がいくつもの仕事ができる社会になっていくと、助け合いの社会が戻ってくるんじゃないか。江戸時代の百姓文化があって、ひとりの人ができる仕事が多くて、お伊勢参りで地域を旅しながら働いていたときも、できることが多いから旅先でお駄賃を稼ぎながら旅を続けることができた。色んなものを循環させたり、社会課題を解決するような構造だった。地域に行くと百姓的なひとが多いので、「百姓」的な働き方、生き方を地域のひとから学ぶというのが裏コンセプトです。

Q. 地域ビジネスにおいて経済的なメリットを生み出す為のポイントは?

加藤さん:大量生産大量消費、グローバルサプライチェーンに依存する企業は厳しい一方で、自社の事業のお客さんの顔が見えていて、関係性が構築でき、サービスを提供出来ているところが継続的に事業を行う上で重要です。加えて、サプライチェーンにおいても「顔が見える」関係でつないでおくことが重要だと思います。

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関係人口がもたらす「つながり」

Q. 困った時に助けを求められる関係性についてどう捉えている?

加藤さん:「仕入れて、売る」という商売の基本ですが、仕入れ側とも仲良くする。仕入れ先候補をたくさん持っている会社は、事業継続性につながっていると思います。

地域でいうと「関係人口」。関係人口の人たちが、慣れていないビジネスを指導してくれたり、お客さん先を開拓してくれたり、ということが起こる。会社も地域も人とのつながり、「ソーシャルキャピタル」である。普段見えづらく可視化されにくいが、地域にとって非常に大事です。

Q. 関係人口の今後の広がりについて、どう感じている?

加藤さん:会社であれば「メンバー」(関係社員)がたくさんいるかどうか。地域であれば、課題をすぐに相談できるひとたちがいたり、面白いアイデアに対し、この指とまれ!で集まってきてくれる人たちが関係人口だと思っています。なにかをきっかけで地域と交流し、信頼関係を紡いで継続的に「この人、この人たち」と関わりたいな!と思った瞬間に関係人口化しているのではと思います。地域と関わるひとが多ければ多いほど、コロナや台風の災害が起きた際、立ち上がりが早いんじゃないかな、と思います。

Q. 加藤さんが考える「繁栄」とは?

加藤さん:(売上利益を目的としたピラミッド組織だと破綻するが、)特定の「共感」するコミュニティだと柔軟性が高いと思います。目的・共感型のコミュニティは重要なエッセンスだと思います。

今年ならではのトレンド 「オンライン関係人口」

Q. 最近加藤さんご自身が感じられている新しい概念はありますか?

加藤さん:「オンライン関係人口」というコンセプトが生まれ、毎週土曜日朝7時に集まるとコミュニティがあり、30週間活動が続いています。オンラインで仲良くなり、オンラインで知り合った人同士がオフラインで旅をしたり、ということが起きている。

去年は、こういった概念はあり得なかったと思います。オンラインで関係性を構築して、リアルで1回会っただけで、仲を深めることができるのは、今年のトレンドだと思います。

ひとってひとに共感する

Q. 地域における「コミュニティづくり」とは?

加藤さん:キーワードは「ビジョンとひと、と飲み会(笑)」。ありたい姿、何を大切にしているかという情報発信して、認知をひたすら広げていくことが大事。知る人が増えると、共感してくれるひとたちが増える。ひとってひとに共感する。コミュニティのパーパス、目的意識をきちんと情報発信していくことが大事だと思います。

稲田さん:ひととの出逢いはオフラインでもオフラインでも数多くあるかと思いますが、その中でうまくいかなかった経験もあったかと思います。

Q. ご経験の中でうまくいかなかったエピソードは?

加藤さん:うまくいかなかったというより、ちょっとした事件のようなものは経験している。例えば、震災後、陸前高田市に色んな企業と話をする中で、ある経営者と名刺交換をした際に「東京の人材会社が何をしに来たんだ」と言われたことがあり、記憶に残っている。そこでの学びは、コミュニケーションをする際に自分がどう思われているか、見られているか、に対する準備があれば、うろたえずに出来たのでは。

海外に出向く中で世界は価値観が違い、多様性に溢れていて正解はないと強く感じている。どちらかというと今ある社会の中で自分がどう在るか、に意識を向けた方が良さそうだなと学んだ。

 

Q. (その地域ならではの特産物の特売会を美術館でやってみようと考えているが)地域とアートの関わりという観点で、参考になる事例や地域があれば教えてください!

加藤さん:面白いですね、私自身もアートの捉え方について興味がある。地域住民の人たちもアーティストだし、その人たちが表現するものが五感で感じられる「作品化」ができれば、それもアート。「アートワーケーション」というプログラムを企画、進行している。地域の住民と旅人が自分の内なる多様性に気づく体験。

Q. 地域をまわる中で、加藤さん目線で面白い人たちがいるエリアは?

加藤さん:自社も淡路島に本社を一部移転したが、地方創生7つの要というコンセプトがある。その中で、「食・食の豊かさ」「はたらく」というテーマがある。「はたらく」につい都心的な概念、稼ぐ「稼業」だけでなく、地域の中での「生業」、持続可能にしていく「村業」があるのでは。そういう思想や価値観をもっている起業家や、人たちがたくさんいる地域は面白い。

リニアな経済でなく、サーキュラーな経済であったり、アーバニズムでなく、アニミズムなど。徳島、岩手、宮崎も面白いが、結局はひとなんでしょうね。

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【Bianca掲載】「旅するようにはたらく」はコミュニティ2.0時代の新たなスタンダードだ 旅するようにはたらく部長・加藤遼がめざす世界
https://travel.jobhub.jp/news/311.php

旅するように働く部長が伝授する越境イノベーションのつくり方
https://forbesjapan.com/articles/detail/26385/2/1/1

「収入も、家族との時間も増えた」 都市で働く会社員が「地方企業で副業」のメリット
https://dot.asahi.com/aera/2020101600006.html?page=3

【経済#Word】ワーケーション「観光」からの進化が普及のカギ
https://www.sankei.com/premium/news/200714/prm2007140008-n3.html

事業開発の目線で見るサーキュラーエコノミーのインパクト:パソナ・加藤遼
https://media.gob-ip.net/2020/05/11/lunchmeet-katoryo/

受講生それぞれのパーパスとは何か。
それぞれの込められた想いを表現し、ビジネスプランというアート作品を生み出します。
次回は、いよいよ受講生たちによるビジネスプランのプレゼンテーションです。

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