2018年12月20日、東京のSENQ京橋にて、「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以下こゆ財団)」が主催する「宮崎ローカルベンチャースクール」の第4回講座が開催された。
「宮崎ローカルベンチャースクール」は、こゆ財団の活動拠点である宮崎県新富町を舞台に、地域の課題を解決できる起業家の育成を目指したプログラム。関東近郊などから集まった約20人のメンバーが、ビジネスプランの作成に挑んでいる。
4回目の講座となったこの日は、講師にNPOグリーンズ ビジネスアドバイザーの小野裕之さんを迎え、6人の受講生がビジネスプランのプレゼンを行った。
今回は、2019年1月に行われる最終プレゼンに向けた練習の場でもあり、まだプランが固まっていない受講生も多かった。講師の小野さんや、「宮崎ローカルベンチャースクール」のプロデューサー 齋藤潤一さんからは厳しい指摘が出されたが、その分プレゼンターたちは何かを掴んだようだ。
講師プロフィール
小野裕之 氏
1984年岡山県生まれ。中央大学総合政策学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。その後、ソーシャルデザインをテーマにしたウェブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズの経営を6年務め、2018年、同法人のソーシャルデザインやまちづくりに関わる事業開発・再生のプロデュース機能をO&G合同会社として分社化、代表に就任。greenz.jpビジネスアドバイザー。ジュエリーブランドSIRI SIRI共同代表。おむすびスタンド ANDON共同代表。
起業経験豊富な講師陣から学ぶ
「宮崎ローカルベンチャースクール」は、起業家支援の経験豊富な専門家が講師として登壇する。
今回の講師であるNPOグリーンズの小野さんは、起業家や地域支援の取り組みなどを紹介するメディア「greenz.jp」を運営するNPOグリーンズでビジネスアドバイザーを務めながら、様々な事業の立ち上げなどに携わっている。起業家でもあり、起業支援も行なっている、起業のプロである。
事業を考えるとき、「自分が面白い」と思う気持ちも大事だが、ギミックにこだわらず、シンプルにすることが大事です。
また、完全に黒字化するまでがクライマックス。最初の資金調達も大事だし、長く続けるつもりでやりましょう。
小野さんからは、講義とプレゼンへの批評を通じて、かなり具体的なアドバイスを聞くことができた。
地域課題と向き合いながら、稼ぐビジネスをつくる
今回プレゼンを行ったのは6人。初めてビジネスプランのプレゼンを経験する人も多く、緊張感のある雰囲気が漂っていた。発表された内容は三者三様だ。
「新富町の関係人口を増やすための野菜宅配サービス」
「高齢者に外出する機会をつくるためのボードゲームカフェ」
「新富町のローカルフードを使ったプロテインバー開発」
「新富町のパパイヤのブランド化」などが発表された。
地域の高齢化問題、人口流出、資源活用など、新富町でのフィールドワークを経て、受講生が各々で見つけた課題を独自の事業で解決しようと試みているのが感じられた。
それに対して、小野さんからは「薄利多売。価格設定が低い」「ターゲットが絞れていない」などの厳しい指摘が飛び出した。起業を目指す講座のため、事業として成立するプランでなければ意味がない。フィードバックをもらった受講生は「どうすればビジネスとして成立するか」を改めて真剣に掘り下げていた。
プレゼンも、事業も失敗してからがスタート
総評として小野さん、斎藤さんは以下のように語った。
小野さん:
アイデアありきではダメ。「新富町でなければ」という視点が無いと、地域で起業する意味がない。
齋藤さん:
失敗する場は大事。ビジネスプランのプレゼンも失敗し、フィードバックをもらうことが次に繋がる。
小野さんや齋藤さんの話を聞き、受講生たちは地域起業の意味に今一度向き合うことができた。地域で起業し、そのビジネスを持続可能なものにすることは容易ではない。しかし、そこにチャレンジし、その一歩を進まれている受講生は、より多くの経験と財産を得ていくことだろう。
最終プレゼンは、2019年1月19日(土)13時から、東京・渋谷の「HUMANS」にて開催される。受講生のプレゼンへの講評を含め、ポスト資本主義社会を具現化する「Next Commons Lab」林氏と地域プロデューサーとして全国の地域の仕事づくりを行う齋藤氏が、地方創生の新サービスを大議論する。
地域課題解決のため、ますます注目の集まるローカルベンチャー。今回の受講生の中から、日本の先行事例となるようなビジネスが生まれるかもしれない。そして、次にチャレンジの舞台へ立つのは、あなたかもしれない。