「地方におけるECサイト活用の可能性 ~自社ECサイトはそのままに商圏を海外に広げワクワクを届ける~」

企業×地域=無限の可能性を探る、というコンセプトのもと今年からスタートした「こゆチャレンジ大学(略してこゆチャレ)」。

第1回目のゲストに株式会社ジグザグの仲里一義社長をお迎えしました。自社ECサイトにJavaScriptタグを1行追加するだけで、複雑な操作はなしに日本の商品を海外ユーザーに届けることを可能にしている企業のトップから見る、地方の可能性とは?こゆ財団高橋との対談形式でオンラインイベントを開催しました。

■開催:2021年4月26日(月) オンライン開催
■対談テーマ:「越境EC×地方創生の可能性」
■オンライン動画コチラから
■ゲスト講師:仲里一義 氏(株式会社ジグザグ代表取締役社長)
■対談相手:高橋邦男一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事)
■モデレーター:有賀沙樹一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 広報イノベーション専門官)


「商品を売りに行くのではなく、

まずは来てくれたお客様に精一杯のおもてなしをする」


「この商品、欲しいのに買えない!」

日本人の皆さんの中にも、海外のECサイトにアクセスしたことがある人はそんな悔しい想いをしたこと、一度はあるのではないでしょうか?日本語のナビゲーションが無い、住所の入力で国が選べない、カード情報の入力を異なる言語で求められても怖くてなかなか入力する気持ちにはならない…など、理由は様々だと思います。

同様に、日本国内のECサイトを訪れている海外ユーザーも、この「欲しいのに買えない!」という悔しい想いを味わっています。その数なんと…潜在的に2%~8%!

つまり、仮に年間10万人訪れるサイトが海外ユーザーを意識したサイトにしていないだけで、年間2000人のお客さまの来訪を放置していることになります。

これを仲里さんは、「お客さまが暖簾をくぐってるのに、あなたには売らないよと言ってるようなもの」と表現しており、「リアル店舗であれば一生懸命に接客するのに勿体ないですよね」と仰る姿に、かつて「お・も・て・な・し」とプレゼンした国としても、これは非常に遺憾だし勿体ないと感じました。

仲里社長の話を聞き、こゆ財団高橋も「先入観として海外への販売はかなりのハードルがあると思いがちですが、今はGoogle翻訳などで海外ユーザーとのやり取りもかなりハードルが低くなっていますよね。商品を売りに行くのではなく、まずは来てくれたお客様に精一杯のおもてなしをするという、商売の原理原則を思い出しました」と感銘を受け、何度も深く頷いていました。


株式会社ジグザグが可能にした、

1行のJavaScriptで実現する越境EC対応


ジグザグのサービス「WorldShopping BIZ」とは?

⇒自社ECサイトにJavaScriptタグを1行追加するだけで、ウェブインバウンド対応が可能になるサービス

仲里社長「私たちの(サービスを導入している)ショップの傾向を見ると、海外ユーザーの購買意欲が高いんですね。これまで欲しくても購入できなかった日本のECサイトで一度購入できるとそのことがバズったりたりして新たなユーザーをつかむことにもなるんですよ。売りに行こうじゃなくて、来てるお客さまがまずは買える仕組みを提供することが大事なんですね。それを私たちはコスト最小限でいち早くできます、というサービスを提供しています

サービスを導入するにあたってECサイトを運営するショップ側の負担はほとんどありません。ショップ側がやる作業はただ1つ、「自社ECサイトにJavaScriptタグを1行追加する」。これだけで、海外ユーザーから注文が入るとショップ側はジグザグの国内倉庫宛に荷物を出荷、海外に住むユーザーへの配送もジグザグが代行してくれます。加えて、海外ユーザーからの多言語カスタマーサポートもジグザグが引き受けてくれます。翻訳ツールが普及した今、ショップが自身でやり取りすることも可能ですが、こうしたカスタマー対応まで支援があるのは非常に驚きです。

また、これら含めて月額5,500円(税込み)でショップ側はサービスをまるっと導入可能です。ジグザグはお客様から代行サービス代として手数料をいただいているので、ショップ側は月額費用以上の出費がかさむ心配もありません。


日本のEC市場は約13.8兆円

これに日本のECサイトへの海外アクセス約4%を当てはめると、5000億円規模のウェブインバウンド市場が見込まれる


こゆ財団高橋「機会損失が本当に大きいということが伝わってきますね。来てるお客さまがちゃんと買えるようにするという意識って、意外とおざなりになりがちですよね。国外に限らず、国内でもカードが使えないとか。お店側からするとまだ課題を抱えている状況ですもんね」

仲里社長「越境ECは、文字通り “国を超えたEコマース” という意味なんですが、そうすると海外進出して)売りに行くイメージを抱く方が多いんですね。でも本当は、海外進出しなくてももう既に、海外ユーザーがあなたのECサイトに来ているんです。それが “ウェブインバウンド” です。ECサイトを作ったら当たり前にSNSで集客するように、ウェブインバウンド対応が当たり前になる世界を目指しています」

これを受け、こゆ財団高橋は幾つか新富町の事業者の名前を書き出していた様子で、お茶の香りを愉しむ香炉、茶器を制作している事業者さん等に紹介したいと何やらワクワクした様子。

これまで海外への展開というとものすごくハードルが高いイメージが勝手にあったけれど、それが覆された」と、自身の固定概念から可能性を狭めてしまっていたという気付きを共有するまでに。

※ジグザグでは、実際に日本に足を運んで宿泊・買い物・食事を楽しむ「リアルインバウンド」に対して、インターネットを介して自国から越境ショッピングを楽しむことを「ウェブインバウンド」と定義し、海外ユーザーと国内EC事業者をつなぐビジネスを展開している


「私たちはまだまだ日本を、そして地域を知らない」


「日本人が知らないようなものを海外ユーザーの方が知っていたりする」という仲里さんの言葉にも納得で、地方などで国内では知られていない様な逸品が、海外の方に購入されている事例は少なくありません。それも伝統工芸品などの「THE Japan」な商品に限らず、自国でも手に入りそうなキッチン雑貨や、変わり種ではボーリングの玉まで、想像を超えたオーダーがあるので発見も多いです。

実際、大手企業なら海外進出も当たり前のことと考えますが、街中で支店を持たないような個人商店が海外進出するという話は耳にしません。しかし、このジグザグのサービス「WorldShopping BIZ」を導入している企業約1100社(※2021年4月27日時点)の中には、誰もが知っている大企業だけではなく個人商店さんの導入事例も多くあるとのこと。つまり、今は誰もが店舗や商売の規模を気にすることなく、海外進出できる時代になっているのです。

高橋「地元の商工会には2代目の方も多くいるんですが、創業社長の顧客がベースになってきていてどんどん高齢化して国内で顧客の取り合いになってきているんですよね。どうやって売り上げを伸ばしていこうと考えた時に、海外のことってどこかしら頭にはあるけどハードルが高い、色々と面倒くさいことが沢山ありそうというイメージが色濃いので、そこで商工会とかで今日の仲里さんのお話しが出来たら大きく変わりそうな気がします」

仲里社長「ぜひ!極論、日本全体のウェブインバウンド対応が当たり前になれば、(市場も)大きくなるじゃないですか。結果ユーザーが上手く回遊すればいいな、と思っています」

今回、ウェブインバウンドという切り口から地方創生の可能性を探りましたが、仲里社長の「まだまだ私たちは日本を知らないんです」と仰っていたのと同様、「まだまだ僕たちも地域を知らないということを気付かされました」と高橋。

高橋「農産物を中心に色々仕掛けていますが、他にも鉄鋼業など面白い製品を作っている方々が沢山いるんですよ。でもそういうことを僕らはまだまだ知らないという事実に今日は気付かされました。でもこうしてヒントを頂けたことで、地域の可能性って再発見できるとチャンスを感じました


日本から世界へ

地域から、世界へ


誰もが予測しえなかったコロナ禍により、リアルインバウンドは激減、打撃を受けている業界が少なくありません。そんな今だからこそ、「来店してくださったお客様を逃さずに最高のおもてなしでお迎えする」という、かつて世界中に称賛された日本のおもてなし文化を、今こそ発揮して世界にワクワクを届ける時ではないでしょうか。

「こんなものも売れるのか!」「こんな面白いものがあったのか!」という地域のまだまだ知らない魅力を発掘していくいことで、「世界で一番チャレンジしやすいまち」を掲げる新富町が、どこよりもワクワクを届ける町を実現できる可能性を垣間見ることが出来ました。

これからも、こゆチャレでは様々なサービスを提供する方々との対談を通じて、地方創生の可能性を探り続けていきたいと思います。

Text by Saki Ariga