スタートアップ×地域~HR業界注目の「Spready」×こゆ財団~

企業×地域=無限の可能性を探る、というコンセプトのもと今年からスタートした「こゆチャレンジ大学(略してこゆチャレ)」。

第2回目はゲストにSpready株式会社の取締役、柳川裕美さんを招聘。「やりたいに出会い続ける世界を作る」ことをミッションに掲げ、新しいことに挑戦したい個人と企業の出会いの創出に取り組む企業のトップから見る地方における可能性とは? こゆ財団の高橋との対談形式で、オンラインイベントを開催しました。

■開催:2021年5月24日(月) オンライン開催
■対談テーマ:「繋がりの可視化による地方創生の可能性」
■オンライン動画はコチラから(Youtubeページに飛びます)
■ゲスト講師:柳川裕美 氏(Spready株式会社取締役
■対談相手:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
■モデレーター:有賀沙樹(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 広報イノベーション専門官)

Spreadyとは…個人と企業を繋げるコラボレーションSNSサイト。企業が掲載しているプロジェクトに合う個人が身の回りに居たら、スプレッダーと呼ばれる仲介役が企業に個人を紹介。スプレッダーには誰でもなることができ、既存の方法では実現が難しかった出会いの場を創出することで課題解決に貢献しながら、個人の可能性を広げることを実現。サービススタートからわずか3年で230社に利用されている。サービスサイトはこちらから⇒https://spready.jp/


心理的安全性を最優先に求めると

繋がるチャンスを遠ざけてしまう


SNSの急速な発展やコロナ禍におけるオンライン活用推進により、これまで以上に繋がることが容易になった時代において、改めて高橋から投げかけられた質問は「なぜ人は繋がらなかったのか」でした。

高橋「個人の仮説としては、自分が知っている境界線の中でしか自分を知りたくないと思っている人が多いんじゃないか、という考えです。世界を広げていくことが個人の可能性を広げていくことになると思うんですけど、そこにはどうしても不安がつきまとう。心理的安全性が確保されないから、その不安から人々はこれまで繋がろうとしなかったのではないかと思うんですよね」

柳川氏「その通りだと思います。ビジネスマッチングのプラットフォームは色々ありますし、カンファレンスなどに参加すれば社外の方と出会えるチャンスは昔からいくらでもあったと思うんです。ただ、新しいことに出会うなんてそんな疲れることしなくてもいいじゃん、って方が世の中ほとんどだと思うんですよね。私もこの1年で飲み会や集まりに行かなくてよくなって、楽だなと思うこともあったんですよね(笑)ただそこに、ある一定の目的が成立すると人の紹介による可能性が無限に広がると感じて、Spreadyというサービスを始めています」

高橋「お互いに、ある一定の信頼感があるからこそ紹介が成り立つとは思うんですが、見えない不特定多数同士の人を繋いでいくなかで、どうやって信頼性を担保されていますか?

柳川氏「特に日本人は背中を押してもらうきっかけがないと踏み切れないところがあると思っているので、紹介制にこだわっています

これには、Spreadyというサービスの仕組みが大きく関わってきます。Spreadyでは、企業の「こういう方紹介してください」という募集を見て、「この企業に共感できる」「〇〇さんが合いそうだ」と仲介役であるスプレッダーが判断すると、友人・知人である〇〇さんの紹介文を添えて企業に推薦します。つまりそこには、企業への共感が大前提としてあり、企業の想いや募集要項を理解した上で信頼できる人を紹介しているところに、信頼が担保されていると柳川氏は語ります。


紹介文による繋がりの可視化が、

数値以上の信頼感を生み出す


資本主義経済の中では長らく年収や所属企業などの経済的価値が主流の指標でしたが、Spreadyではソーシャルキャピタル(社会関係資本)を高く持っていることが評価される世の中をつくることを目指しており、トークセッションでは、「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の可視化」というワードに高橋が関心を示していました。

高橋「面白いですね。自分が持っている価値があるもの(資産)を可視化して客観的に認識しあうことって今までほとんどなかったですよね。SNSであればフォロワーの数などになるのかもしれないですけど、共感とか信頼を可視化して繋いでいくうえで、紹介制っていうのはアナログだけどすごくいいなと思いました。フォロワーみたいな数字以上に価値を感じられますよね」

柳川氏「問い合わせフォームから突撃するよりも、人の紹介というだけで古くからの知り合いのような関係性が生まれやすいんですよね。結果、事業共創に繋がっていなかったとしても、話が盛り上がって新しい関係構築に発展しやすくて人の紹介による可能性は無限大だと感じていますね

※社会関係資本(ソーシャルキャピタル)…社会性との関わりの中で人が持つ、つながり資産のこと。


軸となる価値観に共感することから、

新しい関係性が生まれる


こゆ財団はメンバー1人1人、そして財団そのものが人と人、人と企業を結ぶコーディネーターの役割を担っています。関係人口創出を目指すこゆ財団として、新しい関係性をどう作っていくかというテーマは常に取り組んでいる課題ですが、個人の力では限界があるのも事実です。

高橋「人と人の間に関係が生まれるうえで、「わたし」と「あなた」の間に何を作るのかが鍵になってくると思うんですよね。僕たちの場合は、それが『世界で一番チャレンジしやすい街』というビジョンだと思っています。Spreadyさんだと『やりたいに出会い続ける世界をつくる』ですよね。その旗印のもとで濃淡はあるにしても、そのビジョンの元に集っているメンバー、緩やかに繋がっているコミュニティがあると思うんですよね。特定の誰かがいないと繋がらないではなく、その同じビジョンの元に集まったコミュニティの雰囲気やカルチャーに惹かれて、また新たに関わりたいなって人が生まれてくるんだと思うんですよね」

新しい関係性を構築する際に、価値観に100%同意する必要はありません。既存の繋がりの中でも、改めて個人の背景や価値観に目を向けることで、今まで気付かなかった価値が発掘される可能性もあります。地域でこそ、そういったチャレンジがしやすいのではないでしょうか?

高橋「地方創生ってキーとなる人間がいないからできないという話って多いんですけど、その人がいたら必ずしも成功するのかって言ったらそうとも言い切れない。特定の個人に頼るよりも、同じビジョンの元に集ったコミュニティができ上っていくことが大事なんだと思うんですよね」

柳川氏「同じ旗印のもとに集ると、そこでの出会いを通じて各々の興味関心が広がっていくと思うんですよね。その様子をキャッチしていくことから、地域という狭いコミュニティの中で新しい掛け算が生まれると面白いですよね。

社内で、セレンディピティ(=思いがけない幸運な発見、または発見する能力)許容度という言葉をよく使うんですけど、ここで話しているメンバーって許容度がMAX10だとしたら10で、心理的安全性を求める人は多分許容度が1なんですよね。どちらが良い悪いではなく、その許容度と興味関心のタグを掛け合わせることで上手いマッチングができるんじゃないか、という構想も実はしています」

それこそ、思いがけない発見や出会いが、新富町には溢れています。それは前述の通り、同じ旗印のもとに集ったメンバーが作り上げる雰囲気が、また新たな人を呼び込むからです。私有賀もまさにその1人で、新富町というまち、そして人に惹かれて今年4月に神奈川から移住して来ました。それまで縁もゆかりもなかった土地でしたので、当然何度か新富町に足を運び相談もしました。しかし振り返ってみれば、移住を決断した決め手は「なんか面白そう」という、直観の様なものでした。


出会いのストーリーを可視化=共有することで、

1人1人の可能性を広げて関係人口創出へ


こゆ財団の拠点である新富町では、ある1人の出会いからグローバル企業であるユニリーバジャパンとの連携がスタートして、ついに今年の3月にはユニリーバスタジアムが完成KIGURUMI.BIZとは個人の出会いが発展し、本社工場ごと町への移転が実現。今年の4月にはおとみちゃんという町の公式キャラクターが誕生しました。

新富町では実際にこの様な「あるひとりとの出会いが、企業×地域の関係性へ発展している」ことから、地域は「人×人」であると高橋は語ります。

高橋「アプローチは異なるものの、Spreadyとこゆ財団は同じ世界を目指していると感じますね。ぜひ、Spreadyのサービスの中で生まれた出会いの話と新富町で生まれた出会いの話を聞けるイベントをやりたいですね。ユニリーバやKIGURUMI BIZに限らず、新富町には出会いによる物語が沢山あります。これって新富町に限らずあると思うんですけど、そこに光を当てて可視化しているかどうかだけなので、互いにそれを公開していくこと柳川さんと新しい関係を作りたいです!(笑)」

柳川氏「光栄な申し出をありがとうございます(笑)出会いの物語を公開することで、『私にもできるかもしれない』『こういう出会いがあるなら私も一歩踏み出してみたい』と思ってもらえると、みんなの財産になると思うんですよね。だからぜひ、出会いのストーリーを共有するというイベントはやりたいですね!」

「やりたいに出会い続ける世界を作る」をミッションに掲げるSpreadyと「世界一チャレンジしやすい街」を目指すこゆ財団は、共に「繋がりでイノベーションを起こそうとしている」という部分が共通していました。今回、そんな2社のコレボレーションにより何か新しい風を起こせるのではないか、という仮説の元にトークセッションを実現しましたが、話しをしていく中で見えてきたのは、「人×人」により創出された出会いのストーリーを一緒に可視化したいという想いでした。

冒頭、柳川氏から発せられた「就活以外、企業と個人が繋がる機会って中々ないですよね」という言葉に、高橋もハッとしていましたが、関係人口創出に取り組むこゆ財団にとっても、これは新しいアプローチになると感じます。トークセッションの配信終了後も、様々なアイディアが生まれましたので形になりましたら、また皆様へお知らせさせて頂きます。

今後も、こゆ財団はこゆチャレを通じて、様々な掛け合わせを楽しみながら新しい可能性の拡大へチャレンジして参ります。引き続きお楽しみください。

written by Saki Ariga