宮崎LVS第1期の第3回講座を開催しました

第2回のフィールドワークを経て、第3回を開催した宮崎ローカルベンチャースクール(宮崎LVS)。今回の講師は、「生まれた場所や育った環境によらず、誰もが挑戦できる社会をつくる」をビジョンに活動する前田亮斗さんです。

2014年からデロイトトーマツベンチャーサポートで全国のベンチャー企業支援に携わっていた前田さんは、2018年からSBプレイヤーズ株式会社において、新規事業を行う側にシフトしました。

ずっと地方のベンチャーを見守り、現在新たな事業にチャレンジしている前田さんだからこそ分かることをお話いただきました。

講師プロフィール
前田亮斗 氏
佐賀県佐賀市出身。公益法人の立ち上げを経て、2014年にデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(DTVS)に参画。2017年に地方創生関連部署を立ち上げ、最年少事業部長に就任。ベンチャー支援を軸とし、延べ30地域の産業政策立案・実行支援の統轄、全国23拠点の経営企画を担当。
2018年よりSBプレイヤーズにジョインし、新規事業の立ち上げを行っている。
※本講演は、講演者個人のボランティア活動であり、所属組織とは関係ございません。

事業創出に欠かせない3つのポイント

お話の中で、「今日はこの3つだけ、覚えて帰ってください」と掲げられた、事業創出に欠かせない3つのポイントがありました。一言一言にぎゅっと凝縮された内容を、詳しくご紹介していきます。

ビジョンが一番大事!

耳にタコができるほど、前田さんの口から何回も解き放たれた「ビジョン」という言葉。ビジョンは事業がブレそうになったときのコンパスとなり、立ち戻らせてくれるものです。

大事なのは、ビジョンを一言で他人に伝えることです。

ビジョンは自分の軸となるだけでなく、誰かを巻き込む上でも非常に重要です。ベンチャー企業でお金もブランドもない中、できるのは自分が何をしたいのかをはっきりさせること。そうして共感を生むことで、協力してくれる人を増やしていきます。

しかし、ビジョンはどのように作ればいいのでしょうか。前田さんはその方法の一つとして、原体験を探ることを挙げます。原体験に基づいた課題への解決策を考えることで、その策はより強固なものとなります。

また、原体験を語れるようになることのメリットも存在します。人は、相手がどんな人なのかわからないと警戒するものです。そこで、原体験という自らの深い話をすることで、相手との距離をぐっと縮めることができます。

ただし、原体験のストーリーはあくまでも自分の問題でしかありません。相手を巻き込むためには、主体を自分から社会にまで昇華させていき、なぜ今やるのかという緊急性も合わせて話すといいでしょう。

自分主体のストーリーと、社会的緊急性。この2つを掛け合わせることが、相手を動かすエンジンになります。

原体験の探し方

「それでは、原体験を探してみましょう」といきなり言われても、どうすればよいのかわからない人も多いと思います。そこで、今回は感情曲線を書くこととなりました。一番右に今の年齢を記入し、3〜5年の間隔で0歳から数字をふっていきます。

今までの人生で楽しいと思った瞬間、悲しいと思った瞬間をそれぞれ振り返り、これから自分がやろうとしているビジネスとの結びつきを仲間同士で発表しあいました。受講生からは「こうして過去を振り返る機会はなかったので新鮮でした。自分のやりたいことが少し明確になった気がします」という感想があり、互いの過去を知ることで距離を縮めることもできました。

原体験について、前田さんはこのようにアドバイスしています。

原体験を無理にひねり出す必要はありません。キツイ時に立ち戻れる何かがあることが大事なんです。あくまでも一つの方法論なので、これに縛られないようにしてくださいね。

人が欲しがるもの>自分が作りたいもの

前田さんが「ビジョン」の次に多く口にしたのが、「人が欲しがるものを作れ」という言葉でした。 では、どのように作り上げていけば良いのか、その3ステップをご紹介します。

1.課題の質を高める
いいアイデアは、「なぜ自分は気づかなかったのだろうか」と思わせるものなのだそうです。多くの人が抱えているであろう埋もれた悩みや不安に目を向け、「そうそう、言われてみればそういうのが欲しかったんだよ」という潜在需要を掘り起こすような課題の提示に価値があります。いわば、多くの人にとって「盲点」となっているものです。

しかし、0からいきなりそのような課題を思いつけるわけではなく、量からしか質は生まれません。最初からいいアイデアを捻り出そうとせず、まずはどんどん書き出してみましょう。

2.解決策の質を高める
課題自体の質を高めたら、次は課題に対する解決策を考えます。その時に役立つのが、「リーンキャンバス」という手法です。

①課題、②ソリューション、③主要指標、④独自の価値提案、⑤圧倒的な優位性、⑥チャネル、⑦顧客セグメント、⑧コスト構造、⑨収益の流れという9項目を用いて、思考を整理することができます。意識すべきは、これら9項目が相互に関連づけられているか、きちんと繋がっているかどうかということ。単に空白を埋めることだけが目的ではありません。

また、これを作る際、ペルソナを設定するのも大事です。ペルソナはターゲットよりも詳しい人物設定を行います。不特定多数に向けるのではなく、身近な人の顔を思い浮かべ、「あの人」を想定することで考えやすくなり、アイデアも具体的なものになるでしょう。

3.顧客の話を聞きに行く

自分が出した課題は本当に潜在需要を刺激するのか、また、その解決策は適したものなのか、最終的に判断するのはお客さんとなる人です。

アイデアは仮説でしかありません。その仮説を検証するために、お客さんのところへ足を運んでアウトプットし、ブラッシュアップしていきましょう。

プロトタイプ(原型)は紙で構わないので、どんどん意見を聞いて、どんどん磨いていくことが重要です。

起業家の群れが地域を変える

周りの人が、積極的に新たな挑戦をする環境。周りの人が、消極的に言われたことだけをやる環境。起業したいあなたは、どちらを選びますか?どちらの方が、成長できそうですか?

おそらく、前者と答える人が多いでしょう。活発に活動する人たちの中に身を投じれば、そこから刺激を受けて自分のやる気に繋がります。また、新しいチャレンジをしようとする人たちが集まると、新たなアイデアも生まれやすくなります。

一人ひとりのビジネスは小さくても、寄せ集まってコラボレーションが生まれたら、地域全体が盛り上がります。こゆ財団がある新富町は、このいい例ですね。

一匹一匹は小さくても、寄り集まって大きな力となったスイミーになぞらえて、これを「スイミー理論」といいます。ローカルビジネスに興味はあるけれどできる気がしない、なかなか一歩を踏み出せない、そんな方はまず、こうした環境に飛び込んでみるのも手かもしれません。

チャレンジする人が日本に増える社会

最後に、前田さんは改めてご自身のビジョン・ミッションを次のように伝えてくれました。

自分の場合は、生まれた場所や育った環境によらず、誰もが挑戦できる社会をつくりたいという想いが強いです。

過去の変えられないことに気をとられるより、変えられることをプラスにしていく方がいいじゃないですか。自分の儲けは次のチャレンジャーにどんどん投資して、チャレンジする人が日本中に出てくる仕組みをつくりたいと思っています。

事業創出に欠かせないポイントとともに、なぜそれが重要なのかという理由まで詳しく教えてくださった前田さん。説得力ある話し方からも、学ぶことがありました。講座もここで折り返し。ここからは今まで学んできたことを生かし、事業実践に向けて動き出します。

※本講演は、講演者個人のボランティア活動であり、所属組織とは関係ございません。