宮崎LVS第1期の第1回講座を開催しました

「地域版MBA」この単語から、その意味を推測できるでしょうか? みなさんが知っての通り、MBAとは経営学の大学院修士過程を修了すると授与される学位のこと。地域版MBAを定義すると「地域資源を活用した新たな経営感覚を身につけ、持続可能な地域社会・地域経済の実現」を目指すものと言えるでしょう。

その人財を育成するために、こゆ財団(一般社団法人・こゆ地域づくり推進機構)が「宮崎ローカルベンチャースクール(以下、宮崎LVS)」を開催しました。この講座の特徴は、東京にいながらにして地域における「ビジネス構築・販路開拓・ブランディング」を学び、地域課題の解決に必要な力をつけられるところにあります。

起業を目指す人のセミナーはたくさんありますが、事例を紹介して終わりのことが多いです。しかしこの講座は、5回を通してビジネスプランを作り上げ、実践するところまでを目指しています。

そう語ったのは、第1回目の講師・こゆ財団代表理事の齋藤潤一さん。齋藤さんは起業家育成を専門とし、今までも数々の事業をプロデュースしてきました。

起業に年齢制限はない。要は「やるか、やらないか」

19歳の子でもおばあちゃんでも、起業することができます。要は、やるかやらないか、それだけなんです。

それは、多くの起業家を見てきた齋藤さんだからこそ語れることです。今回、宮崎LVSに集まったメンバーの年齢は20〜50代と幅広く、職業も広告系・IT系・建築系・大学院生・主婦など、多様なバックグラウンドを持ちます。会場が東京・京橋だけに東京近郊からの参加メンバーが多い中、はるばる群馬県から参加した方もいました。

宮崎LVSへの参加理由をメンバーに聞くと、

「起業に興味はあるが、迷っている」
「何ができるのかわからないので、自分に合っていることを探したい」
「他のイベントでこゆ財団のことを知り、気になっていた」

など、様々な理由を話していたことが印象的です。一方で、話に耳を傾けていくと、どのメンバーからも「地域で何かをしたい」という共通した熱い想いを感じられます。

地域起業家に欠かせない、4つのポイント

地域で事業を行なうには、地域の人の理解を得て、そして巻き込んでいく必要があります。その際に必要なのは、地域に溶け込む力。どんなにすぐれた経営感覚があっても、その力がなければ事業を持続できません。

齋藤さんからは地域に溶け込むための極意を交えつつ、起業家に欠かせない視点を教わりました。

【1】自己紹介は5つのキーワードで

新たな人と出会うとき、まず初めに行なうのが自己紹介です。これで、相手にどれくらい自分の印象を残せるかが大事であると、齋藤さんは語ります。

地域に入ると、公民館の集まりなどで自己紹介をする場が必ずあります。自分のキーワードは、自慢するために並べるのではなく「覚えてもらうため」のものです。

自分が今まで行ってきたことや現在やっていること、その中で自分がアピールしたいことを並べるのはもちろんですが、相手に刺さりそうなもの、つまり共感を呼べそうなものを優先的に並べると、より効果的かもしれません。

【2】数字やエピソードを用いて説明する

データを用いて説明する……これはよく言われることです。なぜ自分がこの事業に取り組む必要があるのか、実際の数字を見せることで客観的に説得力が増します。

たとえば、日本は人口がどんどん減っていますが、果たしてどれくらい減っているのでしょうか。単に「人口減少」と投げかけるよりも、「〇〇年から、〇〇人の人口が減った」という具体的な数字で示された方が、イメージしやすくなります。

齋藤さんがもう一つ重要だと話していたのは、そこに自分のエピソードを交えること。

起業のきっかけや原体験など、人生のストーリーを入れると、あなたの人となりが見えて親しみが湧きます。

あなたが「どういう人で、どういう想いを持っているのか」が見えてこないと、相手も協力する一歩を踏み出しくくなります。

【3】地域資源を活用する

地域資源の活用は講座自体の目的でもあります。地域資源を活用しなければ、その地域に根ざして取り組む理由が不透明になってしまいます。こゆ財団は1粒1000円の「楊貴妃ライチ」のブランディングに成功していますが、

僕たちはただ、ライチの市場を作っただけ。ライチはもともと地域にあったものですし、たまたま熱い想いを持った生産者がいたからできたことです。ライチを生み出したわけではありません。

と齋藤さんは話します。活かしきれていない資源を、うまく活かせるための市場をつくる。この視点を持って、地域の人と地域の未来を共創していくことが重要です。

【4】ワクワクを欠かさない

どんなことをする時にも、取り組む本人自身がワクワクしていないのに、他の人をワクワクさせるのは難しいでしょう。ワクワクを言い換えると「内発的動機づけ」。誰かに言われてやるのではなく、自らが無意識のうちにやってしまうことです。

ワクワクの裏には自分の強みが隠されています。なんでワクワクするのか、そのワクワクをどうしたら事業に活かせるのか、そういう観点から自分がやりたいことを深めていきましょう。

経済面を追求するあまり、ワクワクを失ってしまってはそのうち息切れしてしまいます。「自分は今ワクワクしているかどうか?」が大切です。時には立ち止まり、あなたの「ワクワクステータス」を確認してみましょう。

第2回目は早くも実践。新富町でのフィールドワークが待っている。

2回目となる講座は、こゆ財団がある宮崎県新富町で開催。早速、現地でのフィールドワークを行ないます。一人ではなく、仲間と一緒に取り組むことの意味について、齋藤さんは

同じ地域を見ていても、視点や気づくことは異なります。それを互いにシェアし合うことで価値観が広がり、物事を大きく捉えることができるようになります。仲間がいるこの環境を最大限に活かしましょう。

1回目の講座を終えた受講生に、感想とこれからの意気込みを聞きました。

「夢を叶えるために頑張ります!」
「まだ1回目ですが、エントリーしてよかったと思っています。これからが楽しみです」
「次回はせっかく宮崎まで行くので、楽しみつつたくさんのことを吸収してこようと思います」

すでに気合十分の受講生たち。フィールドワークを終えた後の彼らは、どんな表情をして東京に戻ってくるのでしょうか。引き続き、その姿を追っていきます。