東京・丸の内での「丸の内朝大学」、農業実験レストラン「六本木農園」など数多くの地域プロデュースや企業ブランディングなどを手がける株式会社umari代表の古田秘馬さん。さまざまなプロジェクトを立ち上げ、実行してきた古田さんが大事にしているのはチームの力。こゆ財団の齋藤と、地域と人のパッションを引き出す熱いトークを繰り広げました。
■開催:2020年10月20日(火)15:00~16:30 オンライン開催
■対談テーマ:地方でもう一つ仕事をつくるスタートアップ講座
■オンライン動画はコチラから
■ゲスト講師:古田秘馬 氏(プロジェクトデザイナー / 株式会社umari代表)
■モデレーター:齋藤潤一(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事)
■ファシリテーター:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
地域プロデュースの仕事
7つのポイント
古田さんが地域プロデュースという仕事に関わり始めたのは15年ほど前。社会的な課題を何とかしたいというより、「こんな世の中だったら面白いな」という着想から事業を始めることが多いそうです。
古田さんが企画する際に大事にしていることは、次の7つのポイント。
1、わかりやすいか
2、ミスマッチがあるか
3、アクション。参加できるか
4、フォトジェニックか
5、思わず言いたくなるか
6、大義名分があるか
7、パッションがあるか
これらをポイントに、常に心地よく続くジャズのセッションのように動き続けること。それは古田さんにとって、「0」から「1」への状態を生み出している環境なのだとか。誰が一緒に取り組むのかを重要視し、そこに生まれるセッションを大事にしています。
「プロデュースという役割は、大きな枠組みを決めて余白を持つのが大事。それはプレーヤーたちに自分で答えをつかんでもらいたいから。投げかけはするけれど、どれが答えなのかは僕自身も知らない。答えを最初から用意するわけではないのです」(古田さん)
齋藤:プロデュースの仕事のやりがいは?
プロデュースするのは「人」ですから、自分が思った通りにならないこともあるし、できた時の喜びは2倍にもなるし、いろんな人たちと一緒に登山しているようなもの。チームの楽しさを感じますね。
齋藤:プロジェクトはどこから生まれてくる?
基本的には出会いの中からです。誰かに言われたからやる、ではなく、これ面白そうだと思ったことを、責任持ってやろうとするところ。そのために、プロジェクトを誰がやるのか、最後はそこにかかってくると思っています。ポイントの7番目にある「パッション」を持って取り組む人の存在です。
できない理由を潰すことが
地域プロデューサーの仕事
地方で仕事をすることや、起業することは、まだまだハードルが高いと思われがち。その「壁」を低くする方法はあるのでしょうか。
古田さんは「やってみせて、それで食べていけるなど結果を見せない限り、どんないいことをやっても、職業として注目はされないだろう」と言います。
「そこを一歩踏み出すために、僕ら地域プロデューサーが、できない理由を潰してあげるの大事。魅力はみんな分かっていると思うので、できない理由を因数分解していけば、突破口は見えてくる」(古田さん)
地域に仕事を生み出すには
小さくてもいいから形にすること
こゆ財団では、人口1万7000人の宮崎県新富町から、10年100社1000人の雇用を生み出したいと考えています。チャレンジャーが集まっていて、起業家がいて、小さなシリコンバレーみたいになっている、将来そんな町をプロデュースしようとしています。
そのためには「10曲に1曲ぐらいはヒット曲を入れていくのは結構重要」と古田さん。適度なヒットがあれば、自分の好きなことをする実験的な面白い事業も取り入れていけるから。こゆ財団にも、農家と一緒にプロデュースした1粒1000円のライチのヒットを足がかりに、次々にプロジェクトを立ち上げながら次のヒットを狙うよう示唆します。
現在取り組んでいる農業用収穫ロボット開発というスマート農業分野についても、もっと分かりやすく落とし込んだポイントを作るべき。「例えば、それを使った農業で、20代の若者がビリオネラーになったとか、ね」
地域のやる気に火を点ける
チャレンジする環境を作れ!
新しいことをやると脳は活性化するように、町も新しいチャレンジに向かうとポジティブになるし、いろんなものがうまく回っていく。それが面白いプロジェクトを生み出す環境になる。「地域のやる気に火を点け、小さくてもいいから形にしていく」のが地域プロデューサーのあり方なのです。
古田さんは、地域で取り組む事業はビジネスモデルとキャッシュポイントは一番最後に考えればいいと言います。利益がどのくらい出るか、経費がいくらかかるとか、それよりも、挑戦する間にいろんなものが生み出されていくのが地域の良さ。そこがわかれば、思いっきり挑戦できるのが地域だ、とも。
「いかに自分たちが楽しい状態を保ち続けられるかが重要です。そうすれば、今はお金を生んでいない動きが2年後ぐらいに価値を生んでいる可能性は十分にあるんです」
古田さんには、地域の持つ面白さ、価値、可能性を大いに語ってもらい、エールを送ってもらいました。