協力隊が活躍する基盤づくりは、地域課題の洗い出しと共有が鍵!

全国1000以上の自治体で5000人以上の隊員が活動している地域おこし協力隊。宮崎県新富町でも隊員活動をきっかけに移住や起業した人たちがいます。今回は、短い任期中にいかに活躍できるか、キャリアを積んでいけるか。現役隊員のホンネや、隊員や雇用する自治体をサポートをする人たちに話を聞きました。そこで出たのは、双方の思いがすれ違うミスマッチをなくしていくことが、隊員にも自治体にも幸せをもたらすということでした。

<みやざき産官学連携サミットー地域おこし協力隊2021 合同作戦会議>
■開催:2021年2月12日(金)15:00~17:00 オンライン開催
■オンライン動画コチラ
■基調講演:
西塔さいとう大海もとみさん(地域おこし協力隊制度設計 専門家。合作株式会社取締役、さとのば大学講師、慶應義塾大学SFC研究所上席所員)
■テーマ:「地域おこし協力隊のさらなる活躍に必要なこととは?」
■モデレーター:
高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)

協力隊が存分に力を発揮するには
受け入れ側の制度設計がカギ

基調講演を行ったのは、全国の地域おこし協力隊の制度設計の専門家である西塔大海さん。地域おこし協力隊の条件は、都市部から協力隊になる人が住民票を移していること、自治体が地域おこし協力隊として募集し雇用すること、地域活動をすることの3つだけ。そのため、全国5000人の隊員が5000通りの活動をしているのが協力隊といえます。

〜協力隊の視点から〜

  1. 役場にいる人という信頼に裏打ちされて見知らぬ土地で地域活動を行うことで、公務員としてのキャリアを積む体験ができる。それを活かして、行政と民間をつなぐブリッジ人材になれるというのがひとつ挙げられます。
  2. 募集要項にある業務を8割ぐらいやりながら残る2割は、予算を付けた自主企画のチャンスがあります。自分で考えて、挑戦して、もしかしたら失敗も経験できる。経験学習サイクルと呼ばれ、大人が成長する上で必要な学びのひとつです。
  3. 田舎暮らしのお試しができます。
  4. 収入は都会に比べて減りますが、その中で可処分所得を確保しながら楽しく暮らすためにはスケールダウンが必要。協力隊はそれを楽しめる人に向いています。2つ3つの仕事を組み合わせていくのが、任期後のキャリアにとって非常に重要です。

〜行政の視点から〜

  1. いい企画を作ってそれに見合う適切な人を捕まえて、信頼関係を作ること。
  2. 役場の人手が足りなくて募集するのに、人材を育てている暇はない、というのは間違い。役場の業務、行政の予算の仕組みを教えたり、当初は研修にマンパワーを割くことで求める人材に育っていきます。双方の意見が折り合わない原因となるポイントでもあります。

双方の視点から見てきましたが、いずれにしても受け入れ側の企画力が重要だといえます。

現役協力隊が悩むミスマッチも
今後のすり合わせで解決へ

■パネルディスカッション1
テーマ:「現役協力隊、ホンネとこれから」
パネリスト:霜出侑希さん(西都市地域おこし協力隊)、清山美咲さん(三股町地域おこし協力隊)、西塔大海さん
モデレーター:福島梓さん(新富町地域おこし協力隊)

パネルディスカッション1は、現役協力隊のみなさんが登場。三股町地域おこし協力隊の清山美咲さん、西都市地域おこし協力隊の霜出侑希さん、新富町地域おこし協力隊の福島梓さん、そして基調講演を行った西塔さんというメンバー。

福島さんから「結果を出すという点で思うことは?」との問いかけに、霜出さんからこんな反応が。「私は田舎暮らしを求めて来たのに、最初の3カ月は役場勤務で仕事のルールを教えられて、5カ月目になる今、3年後の起業を勧められるようになった。そんな話は募集要項になかったのに」。

西塔:それは最たるミスマッチですね。まだ5カ月なので、お互いにすり合わせていく時間はあると思います。最初の数カ月は思っていたのと違うという着任後ショックが訪れるので、それが過ぎると隊員側も少しずつ落ち着いていくものです。いい経験をされましたね。

清山さんからは、「私はイベントで何人集めたとかではなく、対話の場作りとか、結果が数字で出ないことをしてきました。その結果を聞かれることが多かったのですが、目に見える結果を出せと言われて悩む協力隊へのアドバイスは?」という質問。

西塔:数字が求められないのであれば、それでよかったということです。求められるとすると、行政側が何を成果として求めているのかを十分に聞くこと。そこに対して気持ちや関係性の構築だけが成果ですというのは、公務員である以上説明責任を果たしていないことになるからです。数字の見せ方は多様なので、外部の人ともつながって、相談するのもいい方法です。

協力隊としてのゴールを、行政側と確認し合いチューニングしあうことがお互いのミスマッチを防ぐ方法で、常に見直すことは必要なこと。結果を見せて説明するところまで含めて、協力隊の仕事なのです。

任期のゴールは次へのスタート
一人ひとりの人生をハッピーに!

■パネルディスカッション2
テーマ:「これからの協力隊サポートのありかた」
パネリスト:吉弘拓生さん(地域活性化センター)、吉村佑太さん(総務省地域おこし協力隊サポートデスク専門相談員)、笠島一郎さん(霧島えびの高原『足湯の駅えびの高原ゼネラルマネージャー』)
モデレーター:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)

パネルディスカッション2では、隊員にとって悩ましい「何をもって成果とするか」問題について話し合いました。

全国の隊員からの相談を受けている吉村佑太さんは、「最初の行政側の制度設計が大事」と言い、そこがずれていると求められる成果と隊員が目指す自己実現のミスマッチが起き、悩む隊員から相談が寄せられるのだそうです。

成果については、
「田舎暮らしがしたいとか、就農したいとか、自分の夢を叶えるのであれば普通に移住してくればいい話です。協力隊は、地域の課題に対して働いて成果を公にすること。数字にすれば、住民に説明したり、隊員を次につなげたりできる。協力隊として来る意味はそこにあると思います」。

協力隊OBの笠島一郎さんは、メディアを利用して地域の魅力アップに成果を挙げたことを紹介。

「地域に入っていくために自分で走り回って人脈を広げ、何事にも地域の人ややりたい人と協働することを心がけています。三股町での任期を終えて現在はえびの高原の活性化に寄与していますが、活動場所が変わって視野もノウハウも広がったと思います」。

地域活性化センターの吉弘拓生さんは、「受け入れ側には隊員の伴走ができる覚悟が必要」と行政サイドからアドバイス。
「例えば、単に地域貢献ではなく、町をデザインしていくデザイナーであったり、農業の後継、飲食店後継のための修行など、明確なミッションを出して、お互いが不幸にならないような工夫をしています」。

隊員はその任期の中で学んだことを次のステップに生かしていくわけで、任期が来て終わりではありません。最終的に一人ひとりのライフプランがハッピーであるように、そんなゴールを迎えることができればいいですね。

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