知れば知るほど、見える世界は変わる! 先生が挑戦し続けることの意義とは〜『みやざきMANABI FES 2020』パネルディスカッション〜

2020年11月3日にオンライン開催した『みやざきMANABI FES 2020』。第2部のパネルディスカッションでは、2020年3月まで学校改革で注目を集めた東京・千代田区立麹町中学校に在籍し、生活指導主任と学年主任を兼務した加藤智博教諭が登壇。改革最中の学校の様子や生徒・教員の変化など振り返りながら、宮崎の教育関係者2人を交えてのパネルディスカッションで率直な意見を交わし合いました。

■テーマ:「先生が挑戦しつづけることの意義とは」
■パネリスト(敬称略)
・加藤智博(立命館守山中学校・高等学校 教諭)
・佐土瀬英嗣(五ヶ瀬中等教育学校)
・羽田野祥子(教育プランナー/宮崎県キャリア教育コーディネーター)

大人になって学ぶことのおもしろさを知る

2014年に赴任した工藤勇一校長による学校改革で、東京・千代田区立麹町中学校は注目を集めました。チーム担任制の導入、宿題廃止、定期テスト廃止…など、数々の改革に加藤智博先生も携わってきました。

「赴任当初は、工藤校長の話がときどき理解できないこともあって」
以前の学校では野球部顧問として部活動に熱心に取り組み、自主的な勉強会などは一切参加したことがなかったと話します。

麹町中には野球部がなかったので、自分の時間に勉強を始めました。
「自分はグラウンドで怒鳴ってばかりだった。本当にそれでいいのか?」
「甲子園に出場するような強いチームは、何をやっているのだろう?」
普段抱くそんな疑問から、コーチングやビジョントレーニング、ストレングスコーチなどに興味を持ち、学び始めました。

するとだんだん、工藤校長の言葉の意味が後追いながらも理解できるように。また自分の行動を変えることで生徒の見え方が変わり、生徒自身が変わっていく様子も感じ取り、ふとした瞬間に気づくことが増えてきます。
「これからの教育は何を目指すべきなのか、次第に見えてきました」。

価値観を変えた、学校「外」の人たちとの出会い

麹町中学校の学校改革は次第に注目を集め、加藤先生も新聞記者やカメラマン、民間企業の社員など、学校外の人たちと話す機会が増えるとこんな変化が。

これまで自分が教員として正しいと思っていたことが意外とそうではないこと、社会には多様な生き方があることに気づき、生徒に自分の中の正しさを押しつけることが減ったそうです。

「知れば知るほど、見える世界が変わってきました」

子どもたちのため、と考えていたことは、
果たして本当に子どもたちのためになっているのか?

このことを常にテーマとして持ち続け、考え続けている、と話してくださいました。

できない理由はたくさんあるが、
できる方法を探してみた

羽田野:宿題や定期テストなど、私たちが変えられない前提で見ていた部分も大胆に改革しています。佐土瀬先生、どう思いましたか?

佐土瀬:先生たちの忙しさやベクトルの違いがある中で、すごいな!の一言です。前代未聞のチャレンジを、校内の先生たちはどう捉えていたのですか?

加藤:もちろん、大丈夫か!?という思いは当然ありました。しかし、比較的経験の浅い先生が多く、責任はとるからと言う校長の旗振りのもと、「できない理由よりできる方法を探そう」とやっていましたね。


羽田野:そういう前向きな気持ちの醸成はどのように?

加藤:お菓子を置いた休憩スペースがあって、そこにはホワイトボードが2〜3箇所置いてありました。お菓子をつまみながら、雑談から対話へ自然にシフトしていく仕掛けだったのでしょうか。また中間層の先生たちが素晴らしく、いろんな人に声かけして自然に集まっては話をしていました。

佐土瀬:実はうちも今年部屋の配置を変えたんですが、意外と明るい雰囲気になりました。

羽田野:ハードから変えることで雰囲気も変わるんですね。

日々のコミュニケーションから
「生徒」を主語に

佐土瀬:今日は「生徒の目線で」とか「生徒を主語に」という話がありました。麹町中学校では生活指導はどうしていましたか?

加藤:私は生活指導の担当でしたが、工藤校長の指示で服装指導を辞めたんです。服装指導をしないと決めた時から、生徒のプラスの変化にすごく気づけるようになりましたね。人間って、意識したところに目がいくと他の変化に気づかないんだそうです。

羽田野:改革だけでなく、日々のコミュニケーションから生徒を主語にする必要があるのですね。

考えを引き出す質問で、
生徒は自ら答えを出せる

佐土瀬:どんな生徒像を目指していましたか?

加藤:目標のトップは「自律」で、「自分で判断し行動できる生徒」です。生徒への声かけの一例として、
①「今、何がおきているの?」
②「あなたはどうしたい?」
そして、
③「先生にどうしてほしい?」
と聞くのですが、最近はさらに
④「今、自分でできそうなことってある?」
まで聞いています。
これを繰り返すと、生徒は自分で答えを出せるようになるのです。

佐土瀬:なるほど。私は待ちきれないことが多いですね。つい自分の考えのレールに乗せてしまう。加藤先生が学校の当たり前を疑いはじめたきっかけは?

加藤:1つは「麹町中学校で働いたこと」、もう1つは「学校外のいろんな生き方を知ったこと」です。気づくためには、例えば、本気で校則を3分の1に減らすならどうする? とか、授業で5分しかしゃべれないとしたらどうつくる? など、ゲーム感覚で考え出す仕組みが大事かもしれませんね。

羽田野:実現可能か不可能かは置いておき、ゲーム感覚で対話するのはいいですね。


一見、不可能では?と思ってしまいそうな麹町中学校の学校改革。実際にその改革を実施・経験し、生徒たちの変化を感じた張本人である加藤先生との対話に、パネリストもオンライン参加者もぐっと引き込まれた時間でした。

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