2020年11月10日、高鍋町にある県立高鍋高校を配信会場に「宮崎県遠隔教育フォーラム 及び 教育の情報化セミナー」が開催されました。同校は令和元年度より遠隔教育システム導入実証研究の指定校。ビデオ会議システムを使って県内教職員など約100名が集結する、宮崎教育界初のオンラインによる教育フォーラムとなりました。
こゆ財団の教育イノベーション推進専門官・中山は、第4部の事例報告において進行役を担当。教育現場のチャレンジに焦点を当て、教育におけるオンラインの可能性を伝えました。
<宮崎県遠隔教育フォーラム 及び 教育の情報化セミナー>
■開催日:2020年11月10日(火)
■開催場所:宮崎県立高鍋高等学校よりビデオ会議システムにて配信
※MRT宮崎放送「宮崎県教育情報テレビ みらい・みやざき まなび隊」で放送(2020年11月28日)
http://mrt.jp/television/manabi/?contents=douga
オンラインで授業参観の後、
高鍋高校による遠隔教育の実践報告
【第1部 授業参観】
高校1年英語/ネイティブスピーカーのディスカッションを聴講
高校2年英語/高鍋高×日南高 即興ディベート(録画)
【第2部 遠隔教育フォーラム】
宮崎県教育庁高校教育課 大﨑博志 氏
「学校ICT環境整備促進実証研究事業の概要、県立学校のICT教育の動向について」
県立高鍋高校 黒木史敏教諭
「高鍋高校における成果発表」
▲取り組みと成果を発表する高鍋高校の黒木教諭
第1部では、高鍋高校における遠隔教育の実際の授業をオンラインで「授業参観」。第2部では、県教育庁高校教育課の大﨑博志氏が県立学校のICT教育の動向などを細かく説明され、宮崎における現状と流れを共有しました。また、高鍋高校教諭による遠隔教育の取り組みと成果の発表もあり、全国的に見るとICT活用が進んでいない宮崎でも、さまざまなオンラインを活用した新しい教育が進み始めているようです。
VUCAの時代、求められるのは問題発見解決能力
これからの教師は「ラーニング・オーガナイザー」へ
【第3部 教育の情報化セミナー】
パネルディスカッション
「オンライン教育は学校現場をどう変えていくのか〜未来の学校教育を見据えてできること〜」
<パネリスト>
●鳴門教育大学大学院 藤村裕一 准教授
●宮崎県教育庁高校教育課 押方 修 課長
●五ヶ瀬中等教育学校 上水陽一教諭
第3部はパネルディスカッション形式へ。まずは鳴門教育大学大学院の藤村裕一准教授により、これからのオンライン教育についてお話いただきました。
探究型の学習に遠隔教育を掛け合わせ、
能動的な学びで生徒が本物のパワーを発揮
日本におけるコンピュータを使った学習は、OECD(経済協力開発機構)34の加盟国の中でも最下位。学力も低下傾向にあると言われます。GIGAスクール構想の実施には4610億円と多額の予算が当てられていますが、それほど重要視されているということ。コロナ禍をきっかけにICT環境の整備等は当初の計画より前倒しで進められています。
これからのVUCA WORLD、つまり先の見えない混沌とした世界を生き抜く子どもたちを育てるには、コンテンツベースからコンピテンシーベースへの移行が求められています。
知識を重視した教師主導の授業から、生徒たちが自ら問題を発見し、協働・対話しながら能動的に進める授業で問題解決能力を養う必要がある、と藤村先生は語ります。
ICT教育先進国のフィンランドでは、スマートフォンなど個人の端末がもはや文房具と同じ。個人の端末使用を許可して授業が成り立つのか不安に感じがちな日本ですが、大切なのは、「教師が生徒を夢中にさせるような学びのスタートをどうつくるか」ということ。また、録画機能を使うことで不登校の生徒も家で学べ、理解度に応じて授業を見直すことで学びの個別支援も可能に。これからの教師は学びのマネジメントをどうするか、つまり「ラーニング・オーガナイザー」としての役割へと変わっていくのだ、と。
「リアルな問題解決に取り組んだ生徒たちが、議論を通して大人すら動かすような本物のパワーを発揮する。これに遠隔教育を絡めるとさらにいろんな波及効果が生まれます」
と、ICT教育で広がる学びの可能性をおおいに伝えてくださいました。
学びの主語は「生徒」
教科教育にも活きる探究的視点とICT
宮崎県教育庁高校教育課の押方修氏は、「GIGAスクール構想の加速化と新時代の学校教育へ向けて」と題して、宮崎県の今の動きについて説明しました。
なかでも2019年度にスタートしたMSEC(みやざきSDGs教育コンソーシアム )を紹介。個々の学校を支援しながら、探究的な学びを全県に広めていきたいと話しました。
進行役の上水教諭(五ヶ瀬中等教育学校)から、パネリスト2人へ質問を投げかけます。
Q.藤原准教授へ。教科教育においては、生徒による課題発見をどう促すことができますか?
藤原准教授:教師自身が教科の目標や言葉の定義を理解・見直すこと。生徒たちが本物の問題に触れ解決に向け協働することで、ハイレベルな学びが生まれます。
Q.押方氏へ。授業改善について、教師に求めたい視点は?
押方氏:ICTは学びのツールであり、学びの主語は常に「生徒たち」であること。学校や教師が考えたことを生徒にさせたらどんなことができるだろう? そんな視点で授業を組み立ててみてはどうでしょう。
第1部の授業参観から会場で視聴していた藤原准教授は、「宮崎の先生たちは柔軟で素晴らしい。おおいに期待しているのでぜひ頑張ってほしい」とエールで締めくくってくださいました。
※続く第4部の記事はコチラから