Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春さんが語る「相手の本質を表現する文章」。これまで数多くの記事を取材執筆/編集する中から感じてきた、リアリティを感じられる文章の作り方について学びます。
■開催:2020年11月16日(木)14:30〜16:00 オンライン開催
■対談テーマ:人々の北極星となる旗を掲げ、本質を描く。伝わる文章塾~Forbes JAPAN藤吉氏とこゆ財団齋藤の対談~
■オンライン動画はコチラから
■ゲスト講師:藤吉 雅春 氏(Forbes JAPAN 編集長)
※紹介記事はコチラ
※Forbes JAPAN 最新号・バックナンバー:zassi.jp
■モデレーター:齋藤潤一(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事/ 慶應義塾大学大学院 非常勤講師)
「どうやったら面白い話・凄い話を聞き出せるか?」
これが生涯最大のテーマだという藤吉さん。
ノンフィクションライターや週刊誌記者など、取材や聞き込みが命ともいえる数多くの経験を経て、常にこのことを念頭に取材執筆をしていると話します。
どんな分野の取材においても、大切なのはオリジナリティ ── つまり「他とは違う話をしてもらえるか」ということ。そこさえうまく聞き出せればもう素晴らしい記事が完成したも同然なのだそうです。
相手の話を引き出す取材のポイント
①事前準備
取材前日、最低でも1時間ほどかけて取材相手の過去の記事などから情報を読み込むこと。「あなたのことを知っていますよ」という姿勢がまず第一なのだそう。どんな言葉をかけるか、どのように返ってくるかをシミュレーションすることで、相手との信頼関係づくりがスムーズになります。
さらに「個人」と「社会情勢」の年表を作り、それを並べることで相手の思考について仮説を立てることもおすすめされました。
②「線」の質問を行う
昨日の過ごし方を詳しく聞きたいとして「昨日の夜7時に何をしていましたか」と大きな枠で尋ねるのは悪手です。人間が積極的に喋りたくなるのは、「点」と「点」が繋がり、自分の記憶がだんだん蘇ってきた時。
先ほどの例で例えるなら、「会社を出たあと、電車に乗ってどこへ向かいましたか?」
さらに「なぜ、その時だったのか?」「それは●●の前か、後か?」「どうしてそこに行ったのか?」など「5W1H(誰が・いつ・どこで・何を・どうして・どのように)」の質問を重ねることにより、相手の頭の中が整理されていくそうです。
③型にはめたリアクションを返す
「これが最も重要」と藤吉さん。歴史や故事成語などに相手の話を当てはめ、「それはつまりこういうことですね」と言います。すると、「そういうことなんですよ」「いや、それはちょっと違って…」と、いずれにしても話が盛り上がったり、掘り下げられたりするのです。
タイトルこそストーリーの本質
取材が終わってもまだ息抜きはできません。藤吉さんは取材後すぐに近くの喫茶店に飛び込んで、同行したカメラマンや担当者と記事タイトルの話し合いをするといいます。
その記事の本質を表すのがタイトル。同時に、ただ本文を説明するだけのつまらないものになりやすいのもまたタイトルなのです。
「たとえ一人だったとしても、もう一人の自分と脳内で会話するようにしています(笑)」と藤吉さん。取材直後の記憶が薄れないうちに、話の全体を咀嚼し俯瞰して見ることが重要だそうです。
うまく書こうと思わない
原稿に着手するときの注意点についても藤吉さんは語ります。
特に書き始めて間もない人がやりがちなこととして、上手な文章を書きたいと思うあまり文章の技巧にばかりこだわってしまうという点を挙げられました。
しかし、読者に伝わらなければ意味がありません。
藤吉さんは原稿がうまくいかなかった記者にご自身の顔写真を送り「これをプリントして壁に貼って、見ながら書いてみてください」と言っているそう。
曰く、「編集長である僕が一番最初の読者なので、その顔を意識しながら書くと結果的に読者に伝えるという意識ができるんです」と。どうしても自己陶酔に走りやすいのが文章ですが、そこを抑え、あくまで読み手の為に書くことの大切さを説かれました。
いい文章とは
藤吉さんの考えるいい文章とは、「言いたいことが人に伝わっている文章」とのこと。
また、聞いた話がきちんと整理されている文章もそうだといいます。
「あれも書かなきゃ、これも書かなきゃ」と話題をいくつもくっつけるのではなく、1つの木を削って作品を作るように「捨てる」ことで文章を洗練させていく。「これが非常に重要だと思います」と話されていました。
また、「堅い組織のライターだと、文章も無難になっていくのでは」と話すこゆ財団・齋藤のコメントに対し、「無難に変えてもいいと思うんですよ。ただ、1つだけ自分の色をつけてみる、自分なりの工夫を入れてみればいいんじゃないでしょうか」と話されました。
「もっと詳しく知りたい人はぜひForbes JAPANで一緒に働きましょう」とユーモアを交えた一面も見られ、終始和やかながらも非常に実のある対談となりました。