農業の未来をドローンとともに ~こゆシータートル大学 商品開発・販路開拓塾レポート~

新富町に新しくできた農業の拠点―「新富アグリバレー」とは

「100年先も続く持続可能な農業を実現する」というビジョンのもと、新富町は、農業ベンチャーの誘致や新規就農を実現した移住者などの農業スタートアップが集まる場所へと変わりつつあります。―その中心となるが、閉店した旧Aコープ跡地に設立準備中の「新富アグリバレー」です。

2019年11月23日(土)。この新富アグリバレーにて、新富町の地域おこし協力隊として一般財団法人こゆ地域づくり推進機構に籍を置く橋本健太さんがイベントを企画。講師に勝俣喜一朗さんをお呼びして「スマート農業を活用して、農家の所得向上を実現するためにドローンがどう役に立てるのか」のトークイベントが実現されました。

冒頭に、この企画の目的を橋本さんはこう語りました。

今まで町民の「生活の拠点」だったスーパーが閉店しました。小学校の真横の場所であるその空間を、次の世代の活動のための拠点としてどうするかを考えた時に、「次世代農業の拠点にしよう」となりました。

ではなぜ「農業」か。新富町は皆さんもご存知の通り、施設園芸農業が盛んですし、『儲かる農業研究会』も結成されています。そのような中で、近年「農業」と切っても切り離せなくなってきた言葉が「AI」「IOT」「ドローン」というテクノロジーの用語。

今回はドローンを使って、新富町にどんな可能性が、未来が待ってるのかを皆さんと一緒に考えていけたらいいなと思います。

参照:『儲かる農業研究会』

橋本健太さん

ドローンで世界を救う講師の勝俣喜一さん

勝俣喜一朗さん

Drone Japan代表取締役社長の勝俣喜一朗さんは、実はWindowsのパソコンを手掛ける元マイクロソフト役員。今は農業にドローンを活用して、今まで「見る」ことができなかった事象を次々と見える化し、収量の増加やよりよい農業環境を目指す研究をしています。

トークイベントスタート!

ドローンについて話し始めた勝俣さん。冒頭少し話してから、

「触ってみる?」

と客席へ。普段は見ることのできないドローンに、子供たちも興味津々の様子です。

初めて触れるドローン

今回勝俣さんのお話は、次の3つの要素で構成されていました。

①4つの目があるドローンの面白い構造

ドローンには、4つの目があると勝俣さんは言います。
それは「音の目」「位置の目」「気圧の目」「GPSの目」です。これ、何かに似てると思いませんか?そう、誰もが持ってるスマートフォンです。

ドローンとコンピューターの違いは、自律して移動するかどうかと、ドローンが考えてシステム化できるかどうか。
スマートフォンのように普及はしてませんが、機能が同じなので普及も伸びていくことは間違いなさそうですね。

②可能性は無限大! こんなこともできちゃうドローンの魅力

ドローンで撮った写真をスクリーンに映した勝俣さん。

広範囲でかつズームしてもきれいに見えるのは、何枚も何枚も写真を撮り、それらを重ねて1枚の画像に加工しているからなんです。

この写真から作物の株数や土中の窒素量など、様々なデータを見ることができ、生育のムラをなくし、収量の増加に繋げることができるそうです。

また、水分量やアミノ酸量も分析することができるそうで、おいしいお米とおいしくないお米が点数化され、合理的農業ができるようになるそうです。

わかることが増えると、できることも増えます。しかし、ドローンは沢山のデータを取るが、容量は決まっている。だからこそ、本当に必要なデータ、すなわち『いいデータ』だけを集めることがこれからは必要になるでしょう。データを取る設計の仕方が大きなカギとなるのです。

データの収集能力の向こうにある、ドローンのこれからに期待でいっぱいです。

③ドローンだけじゃ農業は発展しない!

さて、これまで勝俣さんは、ドローンができることや可能性について述べてきましたが、農業の未来は、あと2つのことが重要と述べています。

ドローンの目的は消費者においしいと言ってもらうような環境を整えることです。

そのためにはドローンのほかに、まずは経験値と努力でこれまで農作物を作ってきた篤農家(熱心で、研究心に富んだ農業家)さんの知識と技術が必要です。

データを集めても、それをどう生かすかは生産者さんにかかっています。
だからこそ、技術と知恵を組み合わせる戦略を立てることに意味があるのです。

そして、こうしてできたおいしい農作物たちを、消費者にとどけるマーケッター。

今の農業の課題を解決し、収益に繋げるには、この三者のチームが必要なのです。

参加者も大興奮! ディスカッションは質問の嵐

勝俣さんの話もいよいよ終盤に近づきました。後半はトークよりも参加者の疑問や質問に答える時間が多く、会場は大盛り上がり。

熱心に質問する参加者の方々

参加者の一人、新富町で主に有機にんじんや米を栽培している宮本恒一郎さん。イベント終了後に、

私は今年初めて、ドローンによるイネの害虫防除をしましたが、今日の話は同じ農業でのドローンの使い方でも害虫防除とは全く違い、活用の幅があることに驚きました。作柄が安定すれば収入も安定するので、農家にとって素晴らしい話。AIを搭載したドローンの可能性は未知数ですね。

とおっしゃっていました。

今回、勝俣さんのトークイベントを通して見えてきた、新富町にアグリバレーができた理由。それは、日々進化するテクノロジーを次世代の身近なものにし、新富町にある豊富な農資源を最大限に活用すること。そうしてできた新富町の作物たちが、新富町の子どもたちの誇りとなるように・・・『新富アグリバレー』でこのイベントが開催された背景には、そんな想いが込められているのではないでしょうか。