まちを潤いに満ちた空間に! アートはみんなのすぐそばにある

アートというとなんだかとても高尚なイメージもありますが、実は普段の暮らしに密着した存在です。音楽しかり、伝統芸能や工芸品しかり。そうしたアートを下敷きに、見せるだけ、楽しむだけのイベントに留まらず、きちんと収益を上げて持続可能な事業に仕上げる取り組みは可能なのでしょうか。そこに今回のトークセッションのカギがありそうです。「アート×地域創生」をテーマに、人と人、地域と人、地域と企業をつなぐアートの可能性について語ります。

■開催:2020年12月9日(水)15:30~17:00 オンライン開催
■対談テーマ:SPECIAL TALKS「アート×地域創生」~アートがまちをつくる・変える~
■オンライン動画コチラから
■ゲスト ※敬称略
堀口正裕(TURNS プロデューサー)
神倉 諒(ポーラ・オルビス・ホールディングス)
細田幸子(株式会社ヤマハミュージックジャパン音楽の街づくりプロジェクト)
■モデレーター:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)

さまざまな「アート」の目線が
地域に元気を与えている

宮崎県新富町のこゆ財団は、地方ならではの人口減少、担い手不足、産業の活性化など、さまざまな課題について解決へ向けた模索を続けています。今回のテーマ「アート×地域創生」も地域の活性化を考える上で取り入れたい項目のひとつ。アートと地域課題は一見無関係にも思えますが、質の高い目線でプロデュースすることで、活性化につながっていく。アートにはそんな力が秘められているのです。

高橋:まずはアートを活用したまちづくりについて、ゲストから紹介してもらいます。

堀口:『TURNS』は、Iターン、Uターンなどで生き方を変えたり、地域で活躍している人たちから「ターン」の魅力を伝える媒体です。私からはまず、新富町を取材した時に宿泊した「茶心」という、こゆ財団がプロデュースした宿を紹介します。
歴史ある古民家を利活用した、お茶の心を体感し文化に触れてもらうというコンセプトの宿で、全国から取り寄せた茶器の展示など細部まで楽しめる空間には、ウェルビーイング(well-being)の要素が詰め込まれているように感じました。

▲こゆ財団プロデュースの宿「茶心」

細田:2014年から「渋谷ズンチャカ」という音楽祭を、ヤマハが渋谷区とタッグを組んでやっています。「1日だけの音楽解放区」をスローガンに、地元の商店会会長さんを実行委員会に、ボランティア、自治体や企業なども加わって、セッションやワークショップなどが行われます。渋谷は再開発中で、今は工事中だけれど、街の未来を「自分ごと」として楽しみにできる仕掛けを作ろうということがきっかけでした。

▲渋谷ズンチャカの開催風景

神倉:当社は化粧品会社ですが、美を追求する企業ということで、社内ベンチャーを活用して、2018年から伝統工芸コーディネート事業に取り組んでいます。銀座にあるギャラリー「ポーラミュージアムアネックス」で、地域に根ざす工芸品を紹介し、今年からはそれを販売していくという事業です。インスタグラムでの発信も始めていて、暮らしの道具をシーンと共に紹介しています。

▲2018年にポーラミュージアムアネックスで開催された「匠の森展」

キーワードは「持続可能」
人がつながること、収益が上がること

高橋からゲストへ問いかけます。いま全国には無数の「やってみた」の実例があるが、それを続けるためにはどうしたらいいのだろう?

細田:ただ1日の音楽祭ではなくて、残りの364日も1日1日が本番と思えるような音楽祭を作りたい。そういうコンセプトを地元の方にも少しずつ理解してもらった結果、人と人のつながりが高まってきたのが要因だと思います。

神倉:3年目で課題も多いのですが、会社の事業とするためにも、収益性は大きな課題です。作家さんにも積極的に関わってもらいたいので、当社のギャラリーに出せば売れる、など、地域や作り手にもメリットがあるという発信は必要だと思います。

堀口:ものづくりが盛んな大阪の八尾市で、地域の企業の魅力を知ってもらおうと、35社が場所や知見も共有しながらワークショップや人材交流を始めたら、事業がどんどん生まれた事例があります。1人では持ち得ないスキルを外部人材に頼ることで広がりや、パッションが生まれていきますね。

新富町でやってみよう!
地域とアートのコラボレーション

細田さんのチームは、地域の福祉領域で働く人向けの音楽の講習会も開いていて、受講者はワークショップの指導ができるスキルを身につけているそうです。

高橋:新富町でもミュージカルが長く続いていて、音楽的な素地も十分あると思います。ぜひヤマハさんとつながるプロジェクトを発案したいですね。

神倉:まだアイデアですが、銀座からの発信だけではなく、ポーラオルビスの目線でプロデュースした工芸展を地域で開催するのもいいですね。

堀口:その最初のモデルを新富町の宿「茶心」でどうですか?

最初はイベント的な着想であっても、そこから人が出会い、知見が広がる。今回のトークセッションも、町のこれからを広げていく、ひとつのきっかけとなったようです。

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