経営者ならびに経営に関わるチームのコーチングに携わっているプロコーチ・海野慧さん。
「コーチング」とは一体何なのか、どんな効果が得られるのか。こゆ財団・齋藤との公開コーチングを交えながらトークセッションを行いました。
■開催:2020年9月29日(火)14:30〜16:00 オンライン開催
■対談テーマ:未来をつくるコーチング、ビジネスの中で求められるリーダー育成について
■オンライン動画はコチラから
■ゲスト講師:プロコーチ 海野 慧 氏(CarpeDiem株式会社 代表取締役)
■モデレーター:齋藤潤一(こゆ財団 代表理事)、高橋邦男(こゆ財団 執行理事)
「コンフォートゾーン」をずらす
周りの環境が変化しても体の状態を一定に保とうとする働きのことを「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」と呼びます。海野さんのコーチングは、人間の考え方や思考にもホメオスタシスがあるということが考え方の大前提となっています。
例えばあなたが仕事のメンバーに「こんなチャレンジをしようと思う。〇〇君にそれを任せたいんだ」と提案した時、他のメンバーから「待ってください、こんな課題もあるし、あんな課題もあるし、それはできないと思います」なんて意見が出た、という経験をしたことがあるかもしれません。
あなたの頭の中では「こっちだ!」と思っていること(図の赤丸部分)が、相手にとっては自分のコンフォートゾーン(=居心地の良い場所)の外にあった場合、自分の方に引き戻そうとする力が働きます=(Creative Avoidance(創造的回避))。
そのため「いかにやらないほうがいいか」という言い訳を作り上げてしまうのです。
つまり、私たちが「普通」だと思っている現状の世界から抜け出すことはなかなか難しいことだと海野さんは話します。
①コンフォートゾーンの外であるということ
②自分が本当にやりたいことであるということ
③それはいくつあってもいいし、いくら変わってもいい
これらの条件が揃った時に初めて自分の「ゴール」を置けるようになります。
この「ゴール」を作ることで自分のコンフォートゾーンをずらしていく。これが海野さんのコーチングです。
新富ライチは『外』どころじゃなかった!
ここで海野さんからこゆ財団・齋藤へこんな質問がありました。
「今まで、周りの人や家族・先生から反対されてもコンフォートゾーンを飛び抜けてやってみたらできちゃった、みたいな経験ってありませんか?」
それに対し「こゆ財団ではそれが日常茶飯事。新富ライチなんて『外』どころじゃない」という齋藤。
※新富ライチ=こゆ財団がブランド化した糖度15度以上、サイズ40g以上の厳選された1玉1000円の国産生ライチ)
▲最高ランクは1玉50g以上の「新富ライチpremium50」
その新富ライチを例に、海野さんはこう解説しました。
1粒1000円のライチなんてこの世の中に存在しない。でも、それを作ったら売れる商材になる」という、根拠のない自信があったりします。
人は無意識に1日で3〜5万回ほど自分に話しかけていると言われていますが、そこで何と言っているかで自分のエフィカシー(根拠のない自信)が決まります。
このエフィカシーを持てていると、「ゴールの世界」のリアリティが高まります。
「現状の世界」に1粒1000円のライチは存在していなくても「それが絶対にできているし、売れている」という「ゴールの世界」に自分が浸れていると、自分にとっては「現状の世界」より「ゴールの世界」のほうがリアリティが高くなっていきます。
よって、自分は「1粒1000円で売れていないライチがあることの方がおかしい」と認識するため、1000円で売れる方法しか考えられなくなるのです。
「1粒1000円のライチをブランディングする」というゴールが決まってくると、今度はRAS(網様体賦活系)という脳の部位が無意識的に情報のフィルタリングをしてくれます。
そして同じような果物の事例や高級付加価値型のサービスなど、今まであまり意識したことのなかった情報がどんどん入ってくるようになるのだそう。
ゴールの設定方法
「ゴールの設定の仕方はありますか?」との齋藤の質問に対し、海野さんは「それをまさにコーチングを通して作りに行く」といいます。
どれだけ当人は「チャレンジングだ」と思っていても、実は今のまま頑張ったらどうにかなるような、現状の延長線上のようなケースが多いのだとか。コーチングを受けることによって「全然違うところに飛び込んでみる」ような感覚が充実してくるのだそうです。
また、コーチング=ビジネスと偏りすぎず、趣味・社会貢献・人間関係・家族などいろいろな角度から自分の人生におけるゴールをコンフォートゾーンの外に置いていけるといい、と海野さんは考えています。
海野さんの公開コーチングを受けて
海野さんから齋藤へ、公開コーチングが行われました。
「齋藤さん、これからどうしていきたいですか?」
そこから齋藤の答えを一つずつ深掘りする問いが、次々と投げかけられていきます。
コーチングを終え、こんなやりとりが。
齋藤:僕は農業のロボットベンチャーがうまくいくことが、こゆ財団にとっても新富町にとっても最短距離でインパクトがあると思っています。コーチングを受けながら、そこに近づくために現状からゴールに向かって海野さんと一緒に階段を一段ずつ登っていくような印象を受けました。
海野:なるほど。
齋藤:農業は現状維持のままだと衰退していくと言われているなか、変化しないままでいいのかということは問いかけたい。挑戦する人をみんなで応援するカルチャーをつくっていきたいですね。
海野:集団としてのコンフォートゾーンから誰かが出ようとすると、自分の場が崩れてしまう。それを『崩されたくない』という気持ちから無意識に足を引っ張ってしまうことが起きるのです。
だから、人間はそういう生き物なんだと分かっていれば『自分はそういうことをやってしまってるな』と気付くこともできると思います。
その人のコンフォートゾーンをずらしていくことで、その人がより自分らしくパワフルに、挑戦しながら生きることが増えたら世界はもっとよくなる! そんな思いでコーチングに携わっているという海野さんの言葉が印象的でした。