地域課題解決や人材育成に取り組むこゆ財団が、2020年連続開催しているオンライン対談。今回のゲスト講師は、世界的ソフトウエアメーカー『アドビ』のソーシャルデザイナー・武井史織さんです。
同じ課題をもつ人間が仲間としてつながり、自由に発想・表現する社会の実現を目指して活動する武井さん。デザインの力で地方の課題解決につなげるには、「WHYの共有」と「ギャップをなくす」こと。その意図とは?
■2020年9月25日 ZOOM開催
<講師>武井史織さん(アドビ コミュニティマネージャー)
●参加者:齋藤潤一(こゆ財団 代表理事)、中山雄太(ローカルクリエイター)
●オンライン動画:https://www.facebook.com/1865017710416047/videos/324012945371462
※参考:武井さんインタビュー記事
<Forbes JAPAN>
アドビが本気で力を注ぐ、「表現しやすい社会」をつくること
<PR table>
フレンドレイジング(同士集め)は透明なコミュニケーションからはじまるーーアドビ コミュニティマネジャー 武井史織さんの関係構築術
デザインとは、「物事の本質をつかむ感性と洞察力」
おしゃれなパッケージ。スマートなロゴ。
「デザイン」という言葉からこれらをイメージしがちですが、
これは表層的なデザイン(の一面)です。
今回のテーマに入る前に、まず、デザインとは?という共通認識からスタートしました。
デザインとは技能ではなく、物事の本質をつかむ感性と洞察力である。
(クリエイター・原 研哉氏)
デザインはクリエイターだけが持つべきスキルではなく、それを発注する企業・地域住民もまた、その価値を理解する必要があります。地域課題は何か、なぜ課題があるのか、なぜ解決しなければならないのか。私たち一人ひとりが「自分ごと」として捉え、クリエイターとこれらを共有した上で共創することが成功のポイントと言えそうです。
そして、FUN! 楽しみながら共創すること。問題解決へのプロセスを楽しめるかどうかも大事な要素です。
そのために必要なことを、武井さんは
“Design Democratization(デザインの民主化)”と表現します。
デザインを生み出すクリエイターと、地方の地域住民との間にはギャップがあり、うまく作用していないという課題を感じたのは、武井さんや地域で活動するクリエイターたち。デザインというもののバリアを無くし、ビジュアルの力・デザインの価値を理解してもらうため、クリエイターたちと地域(ジモト)の連携を創出するプログラム『Design Jimoto(デザイン・ジモト)』を立ち上げ活動されています。
まちに「おもしろい大人」がいるかどうか。
自由に表現できる雰囲気を醸成しよう
1粒1000円のライチ「新富ライチ」をブランディングしたこゆ財団・齋藤は、地域とクリエイターのギャップを経験してきた一人。
「デザインの民主化! いいですね!」
と武井さんの話に共感しながらも、
「イベントやワークショップのように、一過性に終わってしまわないですか?」
と疑問を呈します。
「Design Jimotoを実施して変化したことを、しっかり見える化して地域に伝えることが課題です」と武井さん。
例えばこゆ財団のような行政の実行部隊が外部にあることも、イベントから社会実装へと移行するには有効だと、二人は意気投合します。
そして、もっと大きな課題も。
コロナ禍で大半のコミュニケーションがオンラインに移行し、人権問題、誹謗中傷など、社会課題はより浮き彫りになりました。世界では多くのクリエイターたちがSNSで声を上げるなか、自分の意見を表現しにくい今の日本。
「この状況は変えなければいけない」と武井さんは語気を強めます。
「自分が直感したこと、心がざわざわしたことを失わないで。どんどんシェアしていこう!」
それができる地域になるには、おもしろい大人たちがいること。いろんな大人たちが好きなことを一生懸命楽しみ、そんな多様性を受け入れている雰囲気が、自分を信じ自由に表現できる地域づくり・活性化に不可欠なのです。
見直そう「豊かさの定義」
どこにいてもWHYの共有でアクション起こせる
最後に、新富町地域おこし協力隊でローカルクリエイターの中山さんが、武井さんに質問します。
「地域にクリエイターが少ない。都市部のクリエイターがもっと地域で活動するようになる可能性はありますか?」
それに対して、武井さんが提示した2つのビジョンがこちら。
①自分の『豊かさの定義』を見直そう。このデジタル時代、どこにいても誰とでも連携可能。もはや場所という概念にとらわれる必要なし!
②『WHY』を一致させ共有すること。その上で意見し合えるフラットな環境を構築し、課題解決のプロセスを共有し共創しよう。
アドビという世界的な企業が、日本の地域に対してこれほどまでに注力していたとは。視聴者からのそんな思いが聞こえてくるようなオンラインイベントとなりました。
課題解決にデザインの力を。
デザインの持つ本質とパワーを活用して、自分のジモトをワクワクする地域へとデザインしてみませんか。