2020年5月16日(土)、こゆ財団教育イノベーション推進専門官の中山隆が、令和2年度宮崎県教育委員会オンライン土曜講座に登壇しました。
ちょうどその1週間前、中山はこゆ財団で宮崎県内の100人を超える教職員を集め「あすの宮崎の教育のためのオンライン研修会」を開催。コロナ禍で加速するICT教育推進に向けた取り組みが多方面に波紋を広げ、県教育委員会主催で再度約100人が集まるほどの緊急オンライン講座となりました。
Zoomを授業に生かすには?
前週の参加者の大半が高等学校教員だったこともあり、この週は小中学校教職員を対象に開催されました。
オンラインコミュニケーションツールZoomを、まずは使ってみて慣れていこう!ということで、中山がホストとなり教育現場で使いやすい機能を中心に紹介しました。
Zoomをはじめさまざまなオンラインツールでは、通常教室で行う授業に近いことができます。
・画面共有しながら各教科の授業ができる
・参加者(生徒)が発言できる
・挙手機能を使い意思表示できる
・チャットができる
・騒がしくなった時静かにさせることができる(ホストが一括で全員をミュート可能)
こんなとき、どうする?
また、よくある困り事では、
・接続が不安定
・ハウリング
などがあり、このような事態や欠席者への対応等を考慮して、ぜひ録画機能を必ず使うことをお勧めしました。
またパワーポイントなどの授業の準備が負担であれば、コピーしたりスキャンしたりして貼り付けるだけでもOK。黒板のようにアンダーラインを引いたりもできるので、使い方に慣れてくれば通常の教室での授業とあまり変わらない内容でオンライン授業をすることが可能です。
授業だけじゃないZoomの活用
授業以外でも活用できる場面はいろいろあり、例えば保護者面談、個人面談、ホームルームやグループ対話など。
そうなると気になるのは心理的安全性や機密性の担保等ですが、その場合に役立つZoomの機能も紹介しました。
最後にブレイクアウト機能を使って任意の5人グループに自動振り分けてグループセッション。参加者たちは、自己紹介から雨の日に子どもたちを楽しませる工夫をそれぞれ発表しました。
宮崎県内のオンライン導入事例紹介
次に、宮崎県内のICT教育実践者たちは、どのような活動をしているのでしょう。立場の違う2人が発表しました。
①宮崎県立飯野高等学校 梅北瑞輝氏
〜「オンライン授業で実現する生徒たちの自律的な学びの仕組みづくり」〜
梅北先生は以前からICT教育を積極的に取り入れた活動をされていましたが、新型コロナウィルス感染拡大を受け、3月から学校全体で生徒たちが個々に学べる環境づくりに取り組み始めたそうです。
新型コロナによる休校中だけでなく、アフターコロナも見据えて、まずは先生たちから学びをスタート。校内で若手教員が積極的に取り組み、先輩たちをサポートする姿が見られるようになった、との報告がありました。
生徒たちはオンラインを活用して自学自習や海外プロジェクト参加などチャレンジが始まっていますが、Wi-Fi環境や端末の有無など個人差があるので、個別に対処を考える必要があるとのこと。
また、依頼を受けて小学校で実施した、オンラインによる遠隔地との交流の事例も紹介。目をキラキラと輝かせながら「次はいつですか?」と尋ねてくるほど、子どもたちはオンラインを抵抗なく受け入れ楽しんでいたそうです。
これまでの学校はFace to faceが主流でしたが、今後は生徒に寄り添うside by side も加えた指導が必要になる、とのメッセージで締めくくられました。
②プラハ日本人学校 教頭 吉野裕子氏
プラハ日本人学校で教頭を務める吉野先生ですが、帰国中にコロナの影響で移動できなくなり、今は宮崎市内に住んでいます。自宅からプラハの3・4年生向けに算数のオンライン授業を始めたばかりだそうです。
ご自身を「アナログ人間」という吉野先生ですが、Zoomの簡単なところから人に教えてもらいながらスタートしました。
そんな吉野先生は、Zoomは「チャットとスカイプが同時に使えるようなもの」と話します。職員会議からスタートし、4月半ば以降からオンライン授業の準備も始めたとか。それにあたり細かなガイドラインの作成、バーチャル背景の作成や著作権の確認などに取り組んだそうです。
始めるにあたって、「まずは家族内で試してみました」という吉野先生。うまくいくコツは、「自信を持って使える機能だけを使ってやること」。最初は画面に入るまで緊張していたそうですが、実際入ってみるとちゃんと顔を見ながら意見が交わせて安心したと話していました。
話を聞いていたオンライン研修会参加者からは、
「子ども向けのガイドラインを見せてほしい」
「兄弟がいる場合、使い分けは?」
など、チャットを通じた質問が飛び交っていました。
つながる喜びを、今だからこそ実感
最後に、インドの日本人学校に赴任予定でまだ宮崎から出発できずにいるという参加者からも、オンライン活用への思いが話されました。
「まだ一度もあったことのない子どもたちにZoomを使って授業を始めたのですが、正直いろいろ大変です。でもインドは3月からロックダウンされており、保護者の方から『オンライン授業が始まって生活にリズムができた』『あいさつの声を聞くだけで涙が出る』と言ってもらえた。オンラインは素晴らしいツールだと思うし、頑張ろうって思えました」
課題や解決策、リアルな不具合も共有できた時間
事例発表を聞き、チャットで質疑応答し、最後に10分間のブレイクアウトで終了した今回の講座。
実は前回の講座からサポート役として、新富町地域おこし協力隊の竹内庸公さんも参加していました。
「今回はより具体的な課題や解決策まで聞けて、共有できたので安心感が広がったと思う。途中停電でつながれないエリアがあったりと、オンラインのリアルが体験できたことも大きなメリット」
と、前回とはまた違った具体的でリアルなオンラインの学びがあったようです。
オンラインもオフラインも学びの場づくりを
2週連続で100人規模のオンライン研修を行った中山は、今後はもっとテーマを絞った研修を、もっと楽しめる内容でつくっていきたいと考えています。
その学びはアフターコロナの時代に生かされ、これからの宮崎の教育をより良いものにしていくもの。そのためには宮崎の教育現場からより多くの人たちが集まり、意見を交わし合い、新しい一歩を踏み出すことで一気に学びが展開していくはずです。
オンラインも、オフラインも問わず学びの場づくりをー。今回の講座は、子どもたちの学びのために大人たちがつながり、チャレンジしていくきっかけになったのではないでしょうか。