2020年7月から開校した「こゆソーシャルビジネススクール2020」。地域課題をワクワクする手法で解決するため、約10名の宮崎県内の有志が受講しました。地域の起業家リーダーを講師に迎えた5回の講座と各自ビジネスプランの構築に時間をかけた約3カ月。そのソーシャルビジネスプランの最終発表会を10月10日(土)にオンラインで開催。プレゼンテーションの前に、審査員として参加するお三方を迎え、「ソーシャルビジネスの作り方」についてのトークセッションを繰り広げました。
■特別審査員:田口一成 氏(ボーダレス・ジャパン 代表)、指出一正 氏(ソトコト編集長)、永山英也 氏(宮崎大学客員教授)
■モデレーター:高橋邦男(こゆ財団 執行理事)、橋本健太(こゆ財団 関係人口創出オフィサー)
「他人のことが見えてきた」結果、
“ソーシャルグッド”が当たり前な時代到来
こゆ財団・高橋:ソーシャルビジネスの分野において、現在の宮崎また日本の動向はどう感じますか?
永山さん:この5年、大きく変わりつつあります。こゆ財団やつの財団が登場し、地域内だけでなく国内外とつながりながら資源を活かす活動を展開していますね。とても期待しています。
田口さん:若手たちの機運の高まりを感じますが、同時に60歳以上の方々も退職後に社会事業化されるパターンも出てきました。私たちボーダレス・ジャパンも地域に特化した事業に移行しつつあり、ローカルや地域社会をどう良くしていくかを考えることはとても時代に合っています。
指出さん:ソーシャルグッドやローカルグッドが、当たり前の世代が登場してきました。これまで自分のことで必死だった時代から少し余裕が出てきて「他人のことが見えてきた」のでしょう。自分や他人がどう思っているかを考えることで、ビジネスの種が生まれやすくなります。
永山さん:ビジネスで成功することより、社会課題をどう捉えるか、どう向き合うかが一番大切ではないでしょうか。企業に勤めていても、自分の分野で新しいことにチャレンジしていくような企業の風土が生まれるといいですね。
事業化する方が継続しやすい
こゆ財団・高橋:ビジネスにチャレンジする、しないはどこで判断したらいいのでしょう?
田口さん:事業化することで社会的なインパクトが大きいものは事業化した方が効果的でしょう。ただ、「社会課題の解決が目的だからビジネス化は難しい」という声もよく聞きますが、私は逆に「ビジネス化する方が課題解決手段として難易度が低い」と思います。ビジネスにして持続可能な組織体をつくる方がいい、そんな考え方も増えてきています。
指出さん:大切なのはどんな社会にしたいのか、つまり“ソーシャルコンセプト”です。その手段としてビジネスがあります。目の前にある課題は誰の課題なのか? その当事者たちのどんな原因で起こっているのか、課題と原因を明確にして解決策を立てる必要があります。つまり、人の問題とセットで追求していくことで、実効性の高いものになっていくのです。
ソトコトも22年続いていますけれど、まさにチャレンジングですよね(笑)。
ソーシャルビジネスは競争より「共創」
こゆ財団・高橋:ソーシャルビジネスを形にしていく時、「横のつながり=ネットワーク」が大切なのかなと感じます。
永山さん:外との関わりをもつことで継続性を生みます。一人でやると悩むことも多いので、仲間はたくさんいた方がいいですね。
田口さん:ソーシャルビジネス仲間の合言葉は「いい社会をつくりましょう!」。役割を分担して穴を埋め合いながら、横で手を結べるのがソーシャルビジネスであり、顔が見えるという点では地域にアドバンテージがあります。
指出さん:坂倉先生(東京都市大学准教授)の言葉を借りれば「ゆるふわ」なコミュニティ。楽しそうだな、自分も何かできそうだな、と思わせてくれるような場所があるといいですね。
永山さん:「ゆるふわ」は宮崎の風土や県民性に合いそうですね。コミュニティをつくってつながって、その中で自分自身が楽しんでいることが大事。そんな雰囲気を各地域に広げていけたらいいですね。
楽しく、ワクワクしながら!
大変だからこそ自分ごとになる一面も
こゆ財団・高橋:いくつものソーシャルビジネスに関わる田口さん、実際どうですか? 大変ですか?
田口さん:大変ですよ、でも楽しんでますね。体力的に大変でも、自分の人生を思い描いている方向に動かせていることは幸せですから。「楽しい」や「ワクワク」は必須。でないと頑張れません。
指出さん:約1年前に自分が経営者としてソトコトオンラインを独立させました。以前の編集長は単なる役職でしたが、経営者となった今大変だからこそ「社会にコミットできているか」を自分ごととして本気で考えるようになりましたね。
オンライン視聴者に向けて高橋は、「自分のワクワクや自己実現したい思いを抱えている人は、今日をチャレンジのきっかけにしてほしい」と締めくくり、この3名の審査員によるトークセッションは終了。受講生たちの最終プレゼンテーション開幕へと、期待感を高める熱い時間となりました。