工業化時代の20世紀から、AIを含めたソフトウェアの時代に移行する大変革時代の現在。混沌の中で、子どもをどう育て、導いていくべきでしょうか。世界最先端の教育から見えてきたその考え方とはーー。
そこには、これまでの記憶型の教育の先を行く、民主主義の未来をも見据えた世界が広がっていました。
■開催:2020年9月24日(木)14:00~15:30 オンライン開催
■対談テーマ:新・エリート教育。世界最先端の教育から見えてきた、これから求められるリーダーシップとは?
■オンライン動画はコチラから
■特別ゲスト
竹村詠美氏
マッキンゼー米国本社や、日本のアマゾンやディズニーなどを経て、2011年にPeatix.comを共同創業。グローバルなビジネス経験を生かした教育活動に取り組み、教育ドキュメンタリー映画の上映や対話会の普及、「創る」から学ぶ未来を考える祭典「Learn by Creation」主催や研修も行う。『新エリート教育 ~ 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?』(日本経済新聞出版)を上梓。二児の母でもある。
■モデレーター
齋藤潤一(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事)
高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
「ホール・チャイルド・アプローチ」
子どもがウェルビーイングを保てる学びを
全員が同じ制服を着て、先生に言われたままに暗記して答えていくという教育はすでに変わりつつある「変革の時代」。そして、自分自身がOSのようなものでアップデートをしていく「ソフトウエアの時代」。この竹村さんの言葉が印象に残っていると話す、こゆ財団の齋藤。
このようなことを踏まえ、竹村さんが提唱しているのが、著書にも登場する「ホール・チャイルド・アプローチ」という概念。
子どもの頭・心・体の3つを大事にしながら、子どもの幸福な人生を中心に据えた学びの環境を整えようという考えです。
これまでの学校教育は、基礎学力にのみフォーカスして心の幸福についてはどこか置き去りにしてきた感も。
人間は選択肢が少ない方が幸せでいられる。その一方、圧倒的な情報量や選択肢が子どもの目の前に現れる、矛盾したいまの時代…。
だからこそ、昔の寺子屋のように頭だけでなく子どもの心と体も大事にしていこうという考え方だと竹村さんは説明します。
ホール・チャイルドという捉え方で育てていくのは、伴走者である大人の役割だと。
大切なのは「教育観」を持つこと
時には捨てることも大事
そのためにまずすべきことは、「教育観」を持つことだと竹村さん。
どういう子どもに育てるか。どんな大人にしていくか。
それが教育観です。
ただ、竹村さんが懸念するのは、いま子どもにさせていること施していることを何も捨てずに追加を繰り返し、子どもにとってオーバーフローになること。
子どもの時間を奪いすぎないことも大事。
そのためには断捨離することも必要だと話します。
何を捨て、何を残すか。
その時にフィルターとなるのが教育観というわけです。
家庭、教育、学校とそれぞれの単位で教育観がつくられていくのが理想的とか。
こゆ財団・齋藤も、
「(断捨離をすることで)優先順位がつけられるようになる。一つずつ着実にホール・チャイルド・アプローチができていくのかもしれない」
と納得。
地方だからこその手ざわり感
町全体を子どもの学びの場に!
これからの探求的な学びや、プロジェクトを活用した学びを考える時、手ざわり感のある学びは都会より地方の方が圧倒的に有利だと話す竹村さんです。
頭だけで覚えた知識に比べ、体全体で覚えた学びは残り方が確かに違います。
地方にいるおもしろい大人が、ホール・チャイルドという考え方で地方での学びに関わっていけば、町そのものが学校になっていく。
それが竹村さんが考える、地方だから実現できる学びの環境です。
新型コロナウイルス感染拡大によりオンライン通勤なども当たり前になってきたいま、都会と地方という2拠点生活を考える人たちに、そうした環境を備えた町は、拠点としての候補に挙げらえることでしょう。
するとまた、おもしろい大人が増えていく。
子どもの学びの場としてのチャンスは、地方にはまだまだあると竹村さんは力説してくれました。