ビジネスチャレンジャーに聞く「新規事業へのチャレンジを支えた思い」とは?
地域の課題解決のため、また地域資源を活用した事業創出に向けて一歩を踏み出したい人を対象に、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以下、こゆ財団)は新富町内をメインフィールドに起業家育成塾『こゆソーシャルビジネススクール』を開講します。
講座は全5回、プレゼンテーションと2回のフォローアップ講座も準備。アイデアのブラッシュアップ、事業計画書の作成、最終的な融資相談までトータルでサポートするものです。
参加者を募集するにあたり、6月16日(火)19時から新富町総合交流センターきらりにて、事前説明会を兼ねたオープニングイベントを開催しました。まずは本年度からこゆ財団の執行理事を務める高橋邦男氏が、こゆ財団設立の背景や目的、設立から3年間の活動内容について説明しました。
日時:2020年6月16日(火)19:00〜20:30
場所:新富町総合交流センター きらり 大集会室
ファシリテーター:稲田佑太朗(一般社団法人こゆ地域教育研究所)
本日のゲストは、今回のこゆソーシャルビジネススクールの前身として、初年度の2017年に開催した起業家育成『児湯シータートル大学』の卒業生である伊藤寛人さんと猪俣太一さん。3年前、新しいビジネスにチャレンジしたお二人の経験談を聞いた後に、参加者からの質問にお二人と高橋氏が応えていく、という形の事前説明会となりました。
「酒屋5代目のチャレンジは、地域の人財・地域資源との共創」
伊藤酒屋・店主 伊藤寛人さん
25歳で帰郷し、実家の酒屋を継ぐことになった伊藤さんは、鹿児島県の蔵元が中心となり開催している「19歳の焼酎プロジェクト」と出合います。成人という節目に地域の文化を体験し、感謝の心を育むプロジェクトに大変共感を覚えたそうです。
「自分も町の酒屋として町に貢献できないか?」
そこで町にある国の天然記念物「湯之宮座論梅」を使った「座論梅梅酒」づくりにチャレンジしました。2019年春、2020年春と2度販売し、どちらも予約段階で完売。今年は新たに「甘酒」にもチャレンジしています。自己啓発の意味も含めて参加した児湯シータートル大学では、講座を通して志を持つ仲間ができ、その後のモチベーションにつながったと話します。
「最初の一歩でチャレンジの敷居が下がった」
きゅうり農家 猪俣太一さん
農家仲間3人で「耕作放棄地を活用して希少なきゅうりを守る」とクラウドファンディングで50万円の資金を集め、珍しい在来種のきゅうり栽培にチャレンジした猪俣太一さん。成功はしたけれど、続けることができなかったと言います。理由は「販売先に困った、味は今のきゅうりの方がおいしかった」から。キッパリあきらめ、きゅうりで儲かる、つまりは単価を上げるか収量を増やすことにフォーカスしていきました。
ビニールハウス新設に2000万円を投資した段階で、「もう自分は死ぬまで新富にいる」と覚悟。住むなら魅力的な町がいいし、自分が町に貢献するなら農業で稼ぐしかない。そう考え、温度や湿度、CO2濃度などハウス内をセンシングし、自分が目標とする農家さんと同じ栽培環境を目指したといいます。いわゆるスマート農業へと、徐々にシフトしているところです。
あきらめ、切り替えも大事だという猪俣さん。
児湯シータートル大学で受講し、一歩を踏み出したことで、チャレンジの敷居が下がったそうです。得意のコミュニケーション力を生かして情報収集し、常にいろんなチャレンジの種を探しています。
「自分の“ワクワク”を追い求めよう」
高橋(こゆ財団)、伊藤さん、猪俣さんがトークセッション。お二人の発表を聴いた後、参加者一人ひとりから感想、質問をいただきました。
それに答えていく形で3人がトークセッションを行いました。
Q.仕事しながらの受講は大変では?
猪俣さん:本業のきゅうり栽培を75%、余力で在来種栽培にチャレンジしました。クラウドファンディングで資金を集め在来種をつくりましたが、1年であきらめたのは卸し業者さんが販路に困ったから。事業ではあきらめることも大事だと感じています。そのおかげで知り合った業者さんとは今もお付き合いさせてもらってます。
伊藤さん:座論梅梅酒をつくりたいという思いだけで突き進みました。やっていくうちにワクワクが止まらなくなった、という感じです。
高橋:ビジネスではうまくいかないことの方が多かったりしますが、そこで周りや環境のせいにしては長続きしません。やり遂げるには「本当にやりたいことかどうか」が大事になってきますね。
Q.(猪俣さんへ)スマート農業の夢は?
猪俣さん:スマート農業の技術を取り入れて、今の栽培面積の3〜4倍まで増やしたいですね。これからより効率よく、楽に農業ができるようになるのではと思っています。
Q.(伊藤さんへ)発表で“共創”という言葉がありましたが、新富町で共創の事例はありますか?
伊藤さん:チャレンジ第2弾で甘酒をつくりましたが、町内の農家さんたちに米を提供してもらったり、地域に伝わる説話などを教えてもらったりしました。地域にこんな農家さんたちがいるから甘酒づくりにチャレンジできたし、まだまだアイデアはあります。都会ではできない“共創”だと思います。
Q.チャレンジ中のモチベーションはどうやって維持しましたか?
猪俣さん:切磋琢磨し合える農家仲間の言葉や励ましですね。居酒屋で知らない人に声かけられたり応援してもらえたりした時も、頑張ろうって思えますね。
伊藤さん:仲間やライバルの存在でしょうか。受講中はプレゼン準備など慣れないことでプレッシャーもありましたが、みんなの前で恥かきたくない!という思いでやり抜きました。
最終プレゼン審査員・永山氏も激励
この日はこゆソーシャルビジネススクールの最終プレゼンテーションで審査員を務める、宮崎大学客員教授の永山英也氏も、会場にいらっしゃいました。明るくコミュニケーション能力の高い猪俣さん、また伊藤さんの地域の特性を生かした発想力を絶賛。「これから始まるこゆソーシャルビジネススクールは、素晴らしい講師陣が揃い私も楽しみです。個性的な仲間たち、経験豊富な講師陣からどんどん吸収してチャレンジしてください」と、受講生予備軍の背中を押す言葉で会場は拍手に包まれました。
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6月27日(土)で同スクールの申し込みを締め切り、7月7日(火)からいよいよスタート。どんなメンバーが集まり、どんなチャレンジが始まるのでしょうか。